会見に臨んだハリルホジッチ監督。だが、知りたかった解任の経緯は明らかにならなかった。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

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 日本サッカー協会から契約解除を言い渡されたハリルホジッチが再来日し、4月27日に記者会見を行なったね。1時間半にも及ぶ会見だったけど、彼は周りの制止を意に介さず、自分の言いたいことを口にし続けた。そのせいで質疑応答の時間は限られ、さながら“独演会”のようだった。
 
 ハリルホジッチとしては、次の仕事を見つけるためにイメージの回復を狙ったのだろう。結局、新たな真実は明かされず、なぜ解任に至ったのか、原因は謎のままだった。
 
 改めて今回の騒動が起こった原因は、日本サッカー協会が明確な解任理由を示さなかったところにある。田嶋会長は「監督と選手のコミュニケーション、信頼関係が薄れてきた」「ワールドカップで勝つ確率を1パーセントでも上げるため」と語っていたが、どれもあやふやな印象だ。ハリルホジッチが「なぜ?」と疑問を感じたのも当然だ。自らの会見でも「私と選手の間でコミュニケーションの問題はなかったと理解していた」と話していた。
 
 例えば成績不振で監督をクビにするのは当たり前だ。もし拙いパフォーマンスに終わったマリ戦とウクライナ戦のあとにロッカールームで、「こんな戦い方をしているようだったらワールドカップでチームを預けられない」と伝えていたら、ハリルホジッチも渋々、納得したのではないだろうか。
 
 しかし田嶋会長がハリルホジッチに直接、解任を言い渡したのは欧州遠征が終わってから13日後だった。その間に様々な人物と相談したというが、どんなやり取りがあったのか。誰に何を言われたのか、そこが一番気になるところだけど、説明されることはもうないんだろうね。

 今後、日本サッカー協会が公の場でこの問題について話すことはないだろうし、うやむやのまま時は過ぎていくはずだ。ただ、貴重な時間を無駄にし、付け焼き刃の準備でワールドカップに臨むことになった責任は誰が取るのか。反省をしないまま前に進んでも、次の4年間で同じことを繰り返すだけだ。
 
 一方、新たに日本の指揮を執る西野監督は精力的にJリーグを視察している。ただ、ハリルホジッチとすれ違うようにヨーロッパへ向かったのは偶然だったのか。それに現地では長谷部ら11人と面談をしたというが、じゃあこの11人はすでにメンバー入りが決定ということなのか。もしメンバーに加えなかったら面談をした意味はなんだったのか分からないね。
 
 コンディションを確認したいならコーチを派遣するだけで良かったはずだし、国内で対戦国の分析をするほうが、有効な時間の使い方だったと感じるよ。単に世間話をしに行ったのかと皮肉を言いたくなってしまう。
 
 まあ本大会まで時間がないから、ワールドカップに臨む23人の顔ぶれは前体制のメンバーとさほど変わらないのだろう。ここから新戦力を試す時間はないし、もしガラッと変えるとしたら、西野監督は技術委員長時代にハリルホジッチの選手選考に疑問を持っていたということになる。もし本当にそうだったとしたら、助言するべきだったし、それができていなかったのなら、まさに“コミュニケーション不足”だ。
 
 今後のスケジュールは5月30日にガーナ戦、31日に本大会のメンバー発表が行なわれる予定だ。でも、ただでさえ準備期間がないのだから、ガーナ戦には本大会に連れて行く23人で臨むのはどうだろうか。選手のテストをしている場合ではないし、ワールドカップのシミュレーションを行なう必要がある。
 
 ガーナは仮想セネガルとしてマッチメイクしたはずだし、本番さながらに戦ってこそ意味がある。それこそ西野監督は技術委員長としてチームを見てきたんだから、すでに選手の特長は把握しているはずだ。わざわざ新たにパフォーマンスを確認しなくても、メンバーを選ぶことができるはずだよ。
 
 こう考えるとここ一連の対応はすべてが後手に回っていると感じるよ。このままだとロシアでの戦いはどうなるのか。もし惨敗に終わった時に、なにもなかったように「次はロード・トゥ・カタール」だと進み出したら、日本サッカーの未来に大きな危機感を覚えるね。