停止したUSJのジェットコースター「ザ・フライング・ダイナソー」から救出される乗客=5月1日午後6時41分、大阪市此花区(写真:共同通信)

大阪にある「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」(USJ)で5月1日に走行中のジェットコースター2両が緊急停止し、乗客64人が空中で逆さまの状態で最長約2時間も取り残される事故が発生した。人気テーマパークで起きたゴールデンウィーク真っ最中のトラブルは大きな注目を集めた。

そのUSJを運営する会社、ユー・エス・ジェイは2010年以降、9年連続で入場券の値上げを実施するなど、強気戦略を取っているが、業績は堅調に推移していたことがわかった。


専門紙に掲載されたユー・エス・ジェイの決算公告(編集部撮影)

ユー・エス・ジェイが4月2日、ひっそりと専門紙に掲載した決算公告によれば、2017年4〜12月期(9カ月変則決算)は売上高1413億円、営業利益256億円、経常利益211億円、当期純利益70億円だった。

前年の決算公告によると、2017年3月期(12カ月決算)は売上高1658億円、営業利益238億円、経常利益148億円、当期純損失7.6億円。今回発表した2017年12月末までの営業利益は、9カ月間の段階で前年の通期実績を上回っていることになる。

テーマパークは冬期の1〜3月が閑散期に当たり、他のシーズンに比べて収益は悪化する。だが、それを考慮しても、9カ月で前年の実績を上回るなど、ユー・エス・ジェイの業績は堅調に推移していると言えそうだ。

大型アトラクションの導入が寄与

背景にあるのは、季節のイベントや新規アトラクションの積極的な投入による集客増だ。アトラクション「ミニオン・ハチャメチャ・ライド」がオープンから2カ月間で乗客100万人を突破するなど、昨年4月に新設されたミニオン・パークエリアが好評。USJへの来場のきっかけになると同時に、クッキーといったお菓子類やTシャツなど関連グッズの売り上げ増にもつながっているという。

さらに、2014年7月にオープンし「USJを一段上のステージに引き上げるきっかけになった」(同社)、ハリー・ポッターエリアも、安定的な人気を継続。同エリアでは、人気ライドアトラクション「ハリー・ポッター・アンド・ザ・フォービドゥン・ジャーニー」を今年の3月にリニューアルしている。


また、「おさるのジョージ」の新アトラクションもオープンするほか、6月末にはミニオン・パークにアトラクション「ミニオン・ハチャメチャ・アイス」が新登場する予定だ。

こうした積極投資の一方で、入場料の値上げも進めている。2018年2月からは大人の1日券を300円の値上げとなる7900円(税込み)に設定。2010年以降で9年連続となる値上げを断行しており、いまや同じテーマパーク業界の最大手である東京ディズニーランドを500円上回る値段となっている。

2017年度から入場者数は非公表に

毎年の値上げにもかかわらずUSJの入場者数は増加が続いており、前2017年3月期には1460万人と過去最高を更新。2014年に年間100万人を超えた訪日外国人の入場者数が、2017年には早くも200万人を突破するなど、国外からの集客も増えている。


2015年度の入場者数が過去最多となり、記念式典を開いたUSJ。2017年度から入場者数の公表はなくなった(写真:共同通信)

会社側は2017年度(2018年3月期)の入場者数を公表していないものの、増加トレンドは継続しているとみられる。

2020年に予定される巨大複合エリア「スーパー・ニンテンドー・ワールド」のオープンに向け、総投資額600億円超をかけた建設工事も進めているUSJ。任天堂の人気ゲーム『マリオカート』をテーマにしたライドアトラクションなどが登場する予定だ。

USJは映画のテーマパークとして2001年に⼤阪で誕⽣。開業当初こそ⼊場者は年間1000万⼈を超えたが、その後10年にわたって客数が低迷。2007年に東証マザーズに上場したが、2009年に米ゴールドマン・サックス系ファンドを引き受け手にTOB(株式公開買い付け)で上場廃止となった。

2012年に子供向けエリア「ユニバーサル・ワンダーランド」をオープン、2014年のハリー・ポッターエリアの開業で客数は過去最高を記録。2015年には沖縄進出構想とともに、再上場の計画を公表するなど話題になった。

だが、2017年5月にはユー・エス・ジェイの51%の株を保有していた親会社の米コムキャストが残りの株式をゴールドマン・サックスらから総額2548億円で買収し完全子会社化。再上場の話は立ち消えになった。


現在のユー・エス・ジェイのバランスシートを見ると、総資産は7613億円と、売上高で倍以上もあるオリエンタルランドに匹敵する規模に膨らんだ。そのうち固定資産が6987億円、固定負債が4384億円に膨張していることから、株主が変遷する中で巨額の負債と自己のれんを抱えたものとみられる。

USJが抱える抱える課題

コムキャストは、傘下のNBCユニバーサルが運営するロサンゼルスやフロリダ、ライセンス展開するシンガポール、そして建設中の北京を含め、ユニバーサル・スタジオの世界展開を進めていく方針を掲げている。

だが、冒頭のザ・フライング・ダイナソーはでは過去にも不具合が起きており、安全に向けた投資が最優先であることは言うまでもない。

米国資本の完全傘下に入ったユー・エス・ジェイは、新アトラクションやイベントへの積極投資を続けながら、安全対策を万全にした上での顧客の体験価値を向上させることができるのか。今後の持続的な成長のポイントとなりそうだ。