総務省は4月20日、いわゆる「2年縛り契約」の是正を携帯キャリア各社に対して要求する旨を決定しました。携帯電話事業への新規参入が決まっている楽天の「是正に対する強い希望」が叶った形となったわけですが、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんは自身のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』で、「この施策で一番しっぺ返しを食らうことになるのは楽天自身」とし、その理由を詳細に記しています。

総務省が「2年縛り」の是正をキャリアに要求――キャリアに噛みついた楽天は自分の首を絞めることにならないのか

4月20日、総務省は「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」(第6回)を開き、これまでの議論を報告書をまとめた(残念ながらローマ出張中のため傍聴できず)。

総務省のウェブサイトに上がった資料や一部報道によれば、「サブブランド潰し」は不発に終わり、結局、「2年縛り」や「キャッシュバック規制」など、いつもの代わり映えのしない内容で結末を迎えたようだ。

2年縛りに関しては、2年間の契約が切れたあとに自動的に契約更新する仕組みの是正を、各キャリアに要請する方針だ。

現状、3社を比べると、NTTドコモは2年間の契約後に期間拘束のないプランに移行しても、通信料金は2,700円と、2年契約と同額のプランになるようになっている(ただし、更新ポイントはもらえなくなる)。他の2社は拘束期間のないプランは値上げとなったり、再び、違約金がかかるプランになる。どちらかといえば、NTTドコモのプランのほうが総務省的には「優等生」といえるので、他の2社はNTTドコモ方式に追随せざるを得ないだろう。

個人的には、このような方法でKDDIやソフトバンクが辞めやすくなると、ユーザーがNTTドコモに流れ、シェアが再び上がっていくような気がしてならない。これまでは、NTTドコモのシェアが高すぎることが問題視され、いかにNTTドコモのシェアを下げていくかに重きが置かれていたようだが、ここ数年の総務省によるキャッシュバック規制や2年縛りの是正を見ていると、なんだかNTTドコモに追い風が吹いているようだ。

そんななか、報告書を読んでいると、この2年縛りの是正について、楽天モバイルが噛みついた発言が散見されているのが気になった。楽天モバイルは2018年1月15日開催の第2回に登壇し、プレゼンを行っている。

楽天は2017年12月14日に携帯電話事業への参入を表明しているのだが、1月15日の段階では「MVNO」として発言しており、「期間拘束契約の自動更新はMVNO移行への障壁であり、抑止されるべき」とか「48か月割賦はお客様への縛りになっている」とMNO※に攻撃していたのだった。

楽天モバイルの活躍により、2年縛りへの是正が叶いそうだが、果たして、これは楽天にとって良かったのだろうか。

※MNO……携帯電話やPHSなどの移動体回線網を自社で保有し、通信サービスを提供する事業者を指す。国内ではNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクのこと。

楽天が総務省の検討会であれだけ騒いだのだから、MNOとして参入する際には、当然、楽天モバイル同様に音声SIMは最低利用期間12か月、データSIMであれば最低利用期間は0か月、契約自動更新はなく、契約解除料も0円でなければならないだろう。

2019年10月に楽天はMNOとしてサービスを開始するが、ネットワーク品質において他キャリアに比べて圧倒的に脆弱な状態になるだろう。「試しに楽天を契約したら、ネットワーク品質が悪いので、すぐに解約する」というユーザーが増えてもおかしくない。また、MVNOのころは、先行投資などを気にする必要がないからこそ、最低利用期間も短く、契約解除料が0円でも問題ないが、新規参入となれば、設備投資も計画的に行っていかなくてならない。

今回、楽天の発言によって、MNOの2年縛りが是正されそうだが、この施策で一番、首を絞め、しっぺ返しを食らうことになるのは、MVNOからMNOになる楽天自身であるということに、楽天は気がついているのだろうか。

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