浦和レッズが堀孝史監督を解任した。

 昨年のAFCチャンピオンズリーグを制した浦和は、Jリーグ開幕から5試合連続で勝ち星がなく、2分3敗で17位に低迷している。順位を気にするのは、まだまだ早い。ただ、J2降格圏は居心地が悪い。
 
 試合内容は確かに良くなかった。2節の広島戦は前半終了間際に先制したが、66分と79分の失点で逆転された。4節の横浜FM戦では、81分に決勝弾を浴びて0対1で敗れた。

 ここでリーグ戦は中断し、浦和は4月1日に第5節を迎える。磐田とのアウェイゲームは、前半10分を前にPKで先制する。ところが、前半終了間際に同点ゴールを許すと、4節と同じ81分に被弾する。そのまま試合は1対2で終了した。

 磐田に競り負けたゲームは、中断期間を利用した改善が十分でない、と判断されてもおかしくないものだった。指揮官は1対1の時間帯にオーストラリア代表FWアンドリュー ナバウトと李忠成を投入したが、選手交代が試合の流れに影響を及ぼしたとはいいがたい。しかも、ベンチにマルティノス、菊池大介、山田直輝らが控えている状況で、交代ワクをひとつ残して試合を終えた。

 ここから先は結果論だが、ビハインドを背負った時間帯は選手同士の距離が遠くなった。コンビネーションで崩すのは難しくなっていただけに、個人で局面を打開できるマルティネスがいれば、ファウルを誘って直接FKに活路を見出すことができたかもしれない。ベンチメンバーを含めた保有戦力を考えると、「もっとできるだろう」との印象は客観的にも拭えないものがあった。

 このタイミングでの監督交代に踏み切った要因には、スケジュールも含まれているはずだ。J1リーグはここから連戦に突入する。ロシアW杯に伴う5月中旬の中断まで連戦が続く。リーグ戦とルヴァンカップを同時進行で消化していくため、スケジュールの隙間がほとんどない。監督交代のタイミングは見つけにくい。動くなら早く、との判断が働いたのだろう。

 Jリーグにおける浦和の立場を、客観的に見つめてみる。優勝を争うべきビッグクラブなのは間違いない。

 順位表の上を見ると、首位の広島は勝点13を、2位の仙台は勝点11を、3位の川崎Fは勝点10を獲得している。ここまで2引分けの浦和は勝点2だ。タイトル獲得から逆算すると、これ以上離されるわけにはいかない。

 気になるのは後任だ。ひとまず内部昇格で対応したが、クラブの幹部からは経験を重視して人選を進める、との声も聞こえてくる。

 Jリーグで采配をふるった経験があり、いま現在フリーの立場にある人材はもちろんいる。ただ、浦和にふさわしい監督となると、すぐには見つけられない気がする。
監督の選び方は、大まかにふた通りある。ひとつはOBを中心とした人選だ。OBでなくとも、クラブのサッカーを継承・発展できる監督に指揮権を託すのだ。

 レアル・マドリーとジネディーヌ・ジダン監督がこのケースにあたり、国内ならジュビロ磐田の名波浩監督はかつての栄光を知るレジェンドだ。カリスマ性のあるOB監督は選手だけでなくファン・サポーターをも惹きつけ、チームを取り巻く一体感を強固にしていく。

 もうひとつは実績を重視した人選だ。マヌエル・ペジェグリーニからペップ・グァルディオラへつないだ近年のマンチェスター・シティは、こちらに分類される。他クラブで結果を残した監督を招聘するケースは、Jリーグでも数多い。

 さて、浦和は誰に辿り着くのだろう。その時フロントは、どのように説明するのだろう。堀前監督を更迭して新しい監督を呼べば、フロントの仕事が終わるわけではない。監督の任命責任はフロントにあり、その責任の取り方でクラブは良くも悪くもなるのだ。