G・シャビエルは、開幕戦に続く2戦連発弾でチームの勝利に貢献した。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

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 開幕戦で規格外の能力を見せつけたジョーが名古屋の新エースとして騒ぎ立てられているなか、ホーム開幕戦史上最多となる38916人の観衆を集めた磐田との対戦で際立つ存在感を見せたのがガブリエル・シャビエルだった。
 
 名古屋にしては珍しい、と表現されてしまう1-0勝利の決勝点を挙げたことだけが理由ではない。彼もまたJ1でエースを張るにふさわしい選手であることを誇示したからである。
 
 いまや巷で“魔術師”や“大天使(ガブリエルだから?)”と称されるシャビエルは自らをゲームメイカーと定義する男だ。正確な左足のキックで味方の決定機を演出し、セットプレーのキッカーとしても非常に有能。開幕戦でもホーシャのデビュー戦ゴールを演出するなどその銘に違わぬプレーを早速見せつけている。
 だが、一方で昨季によく見られたのが試合によっては“消える”時間帯があったことで、それは主にコンディションに左右されるものだったように思える。何せ7月に来日したその週末にデビューし、ろくに休む間もなく働き続けてきたのだ。2017年シーズン終盤は10月の湘南戦で負った左足肉離れの影響で本来の動きとは程遠いパフォーマンスに終始。だからこそキャンプからしっかりと身体を作ることができる今季への期待が、実は高まっていたところもあった。
 
 実際、G・シャビエルのコンディションの良さは数字にも表れている。G大阪との開幕戦では11.386キロ、今節の磐田戦でも11.020キロとチーム上位の走行距離を記録し、スプリント数も2試合とも20回を上回った。
 
 スピードは彼も自負する持ち味のひとつだが、運動量でも十分な数字が出ているということはチームにとっては朗報だ。より多くの局面にG・シャビエルが関わることで、名古屋の攻撃は彩りを増していく。ここ2戦連続でゴールを決めているのも、ゲームメイクの後にゴール前に詰めるバイタリティがあるからだ。開幕前、風間八宏監督はシャビエルについて問われ、「コンディションが良いよね」と語っていた。それが何を意味するかを、指揮官は分かっていたのだろう。
 
 磐田戦では開始8分で決勝点となるゴールを挙げ、勝利に大きく貢献した。今季の主戦場となっている右サイドの崩しのなかで、宮原和也のクロスの撥ね返りが目の前に転がったのを見逃さず、利き足とは逆の右足で豪快に叩き込んでいる。「右足の練習もしているからね。緊張はしなかったよ」と笑った背番号10は、その後も多くの決定機を演出し、間延びした後半には速攻の担い手として低調に陥ったチームを懸命に引っ張った。
 
 フットサルの香りが漂うテクニックを駆使したボールキープはJ1でも変わらぬクオリティで発揮され、ジョーとはまた別タイプの前線の起点としても機能している。前線からの守備意識を高めている今季はフォアチェックにも精力的で、走行距離が上がっているのは、その要素も多分に影響しているだろう。「J1のほうがプレーはしやすいと思う」という昨季の“予言”は、彼自身の努力とともに現実のものとなっている。
 
 ジョーとは違い小柄なため、今後ハードマークを受けた時の心配もつきまとうが、運動量とスピードはそれを補って余りある成果を期待できる。磐田戦後半にはチームが劣勢に陥る中でも2つの際どいシュートを放ち、90分でチーム最多の4本のシュートを記録している。何から何まで好調というにふさわしい背番号10は、ここからさらにそのクオリティをJ1の舞台に知らしめていくことになりそうだ。
 
取材・文●今井雄一朗(フリーライター)