トヨタ新型CVTどう画期的? 燃費改善の数字よりも注目すべき「最初のギア」の発想
トヨタがエンジンやトランスミッションシステムなど、新型の各種パワートレーンを発表しました。なかでも新型CVT(無段変速機)は、これまでにない発想から生まれた、およそCVTのイメージを根本から覆す画期的なものといいます。
トヨタ新世代パワートレーン群を一挙公開!
2018年2月26日(月)、トヨタは新世代の2リッタークラス パワートレーン(エンジンやトランスミッションなど動力を発生させ車輪に伝える装置の総称)を発表しました。これは、今後、トヨタが世界で販売するクルマの主力モデルに搭載されます。トヨタにとっては非常に重要なパワートレーンです。
トヨタの新型2リッターエンジン「ダイナミック・フォース・エンジン」(画像:トヨタ)。
発表されたのは、まったくの新設計となるエンジンとCVT(無段階変速機)、ほか6速マニュアルトランスミッション、2リッターハイブリッドシステム、4WDシステムです。なかでも「ダイナミック・フォース・エンジン」と名付けられた2リッターのエンジンは世界最高レベルの熱効率を達成。通常のガソリンエンジンでは40%、ハイブリッド用では41%にも届いています。さらに新しいCVTと組み合わせれば、燃費は従来比18%も良くなるというから驚きです。
しかし、今回、特に注目したいのが新型のCVTである「ダイレクト・シフトCVT」です。これは従来のCVTのイメージを塗り替える可能性を秘めています。
発進がイマイチならギアを付ければいいじゃない
CVTは、日本車の多くに採用されているトランスミッションの方式ですが、「燃費は良いけれどフィーリングが悪い」というのが世界共通の認識です。
新型CVTのカットモデル。無段変速なのに発進用ギアを備える(2018年2月26日、鈴木ケンイチ撮影)。
その仕組みは、ふたつのプーリー(滑車)を使って、それぞれのサイズを変化させることで変速を行うというものです。このため、「発進時に先にエンジン回転数を高めて、その後に加速する」「慣性重量が重かったり、ギアの変化に時間がかかったりするため急な加減速が苦手」などの理由から、「モーターボートのようだ」「エンジン音と加速感が別々」という印象を抱かれやすく、欧州やアメリカではあまり好かれていませんでした。
ところが、トヨタの新しいCVTである「ダイレクト・シフトCVT」は、「発進用のギアを備える」という新たな方法を採用。CVTなのに、ギアを併用するなどというのは前代未聞です。
ギアは有るけど無段変速、そのメリットは…?
CVTなのに発進用のギアを備えたトヨタの新パワートレーンはしかし、その結果、「発進時の加速がダイレクトに」「CVTのプーリーを小さくできるので、レスポンスが向上」「ギア比がワイドに」などの数多くのメリットを得ることができました。つまり、走りがダイレクトでレスポンスのよくなるというのです。
新型CVTは発進用ギアを備えることで、ベルト効率を悪化させることなく変速比の幅を15%拡大している(画像:トヨタ)。
ちなみに、今回発表されたトヨタの2リッタークラスのパワートレーンが搭載されるクラスは、世界的に見れば非常にボリュームが大きく、当然、影響力も絶大です。そこで、トヨタの新しい「ダイレクト・シフトCVT」が、従来のCVTの悪印象を払拭していけば、これまでの常識であった「CVTはつまらない」が変化するかもしれません。それだけのポテンシャルを秘めた発表でした。
日本には、どの車種から採用されるのでしょうか。早く新しいCVTの走りを味わってみたいものです。