40年で価格20倍!ロマネ・コンティが今1本100万円もするのはなぜ?
ワイン好きならずとも、「ロマネ・コンティ」の名前を聞いたことはあるはず。
知名度の高さの所以は、その価格の高さにもある。そもそもなぜあんなに高価なのか。ワインジャーナリストの柳 忠之さんに聞いてみた!
Q.世界一高い「ロマネ・コンティ」ってなんであんなに高いの?
――柳さん、世界一高いワインって何ですか?
柳「モリリン(注・編集担当の守屋)、今日は単刀直入な質問で来たね。それはやっぱり「ロマネ・コンティ」でしょ。今や1本100万円以下で手に入れることが難しい。」
柳「最低ね。」
――どうしてそんなに高いんです?
柳「ワインの価格は概ね需要と供給のバランスで決まる。つまり欲しい人が大勢いるのに供給量が限られていると高くなる仕組み。ロマネ・コンティは畑の面積が1.8ヘクタールしかなく、生産量はせいぜい年間6,000本。それを世界中の人が欲しがるわけだから、高くて当然さ。」
ロマネ・コンティのお値段。40年前はたったの5万円
――昔からそんなにバカ高かったんですか?
柳「ここに面白いデータがあるよ。お酒のバイブルと呼ばれる「講談社世界の名酒事典」は78年の創刊だけど、その創刊号に掲載された71年物のロマネ・コンティの値段はいったいいくらだと思う?」
――20万円くらい?
柳「それがたったの5万円。78年の大卒公務員の初任給が9万4,800円だから、今なら10万円を少し超えたくらいの感覚かな。
でも当時のフランスフランの為替レートをユーロに置き換えると、1ユーロ=約300円になるし、その時代はワインの関税に高級ワインほど割高な従価税が課せられていたはずだから、現地価格にすれば相当安いよね。」
――それが100万超えになっちゃったのはなぜ? どうして?
柳「ひとつにはワイン愛好家が世界中に増えたから。もうひとつはワインが投機的価値をもつようになったからだね。
じつを言うと、ロマネ・コンティを造っているドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ社から各国代理店への蔵出し価格はそれほど途方もない金額ではないし、日本に限って言うなら、正規代理店からお得得意様への卸売価格も○十万円といったところ。
ところがそこを離れると、倍々ゲームで値が膨らんでいくんだ。」
今後更に値上がりする前に手に入れるべきワインは?
――それなら正規代理店のお得意様になればいいのでは?
柳「それを望んでいる人がどれだけいると思う? 正規代理店に入荷する分は、著名レストランや有力酒販店など、売られる前からすでに配分が決まっちゃってるよ。
ほら、確実に将来値が上がるフェラーリのスペシャルモデルも、それまでフェラーリを買ったことのない人には新車で売ってくれないでしょ。それと同じ。」
――ほかに投機対象になっているワインって?
柳「カリフォルニアのカルトワインもそうだよね。その代表の「スクリーミング・イーグル」は、メーリングリストに載った人だけがワイナリーから直接買えるのだけど、蔵出し価格は1,000ドル程度らしい。
それが市場に出るとすぐさま倍の値がつき、パーカーが100点をつけた97年は今5,000ドルまで値が吊り上がってる。」
――そもそもそんなバカ高いワインは本当に美味しいんですか?
柳「美味しいね。」
――柳さんもズバッと来ましたね。
柳「ロマネ・コンティの美味しさは別格。もっとも最後に味わったのはもう7年前で、その66年物ロマネ・コンティは、人ではなく神が造り給うた、ワインを超えた存在だと思った。グラスをもつ手がぶるぶる震えたよ。まあ、グラスの中身が20万じゃ手が震えて当然だけど。」
これから値上がりしそうなブルゴーニュの銘醸物
――ひぃ〜、一杯20万! これから値段が上がりそうなワインって?
柳「ボルドーのトップシャトーは高値安定で、今はロマネ・コンティ以外のブルゴーニュの高騰が著しい。アルマン・ルソーのシャンベルタン、コント・ジョルジュ・ド・ヴォギュエのミュジニー、コシュ・デュリーのコルトン・シャルルマーニュなど。
すでに十分高価だけど、グッチやバレンシアガなどのブランドを所有するピノー家が買収したクロ・ド・タールも、今後ますます値が上がるんじゃないかな?」
――もうこうなったら、田舎の庭先で年産100本の超カルトワインを造って、世界一高いワインを目指してやる!
柳「う〜ん、いくら供給が少なくても、需要がないとねぇ(苦笑)。」
今買っておくべきはこの1本!
「クロ・ド・タール グラン・クリュ 2014」
1141年から歴史にその名が刻まれる、由緒正しきモレ・サン・ドニ村の特級畑。ロマネ・コンティ同様、所有者が一軒のみのモノポールで、2017年にモメサン家からピノー家のグループ・アルテミスへ売却された。緻密で繊細ながら、力強さも秘めている。※写真はヴィンテージが異なる。
¥50,760/エノテカ・オンライン TEL:0120-81-3634
教えてくれたのは、柳 忠之さん
■プロフィール
世界中のワイン産地を東奔西走する、フリーのワインジャーナリスト。迷えるビギナーの質問に、ワインの達人が親身になって答える