岡山・両備HD、規制緩和に反発して「赤字バス31路線」廃止届を提出 国はどう対応するのか
岡山県などで路線バスを運行する両備ホールディングス(HD)が、規制緩和に対抗して赤字31路線の廃止を国に届け出た。
ネット上では、バス会社の動きを支持する声が多い。Jタウンネットでは、国土交通省の中国運輸局に今後どのように対応するのか話を聞いた。
割安運賃の他社参入で、赤字路線維持できない
きっかけは、岡山市中心部で運賃100円の循環バス「めぐりん」を走らせている八晃(はっこう)運輸が2017年春、利用者の多いJR岡山駅―西大寺間のバス運行を申請したことからだった。この区間は、両備傘下の両備バスや岡電バス2社もバスを運行している。
岡電バス(Rsaさん撮影、Wikimedia Commonsから)
2社が100〜400円の運賃なのに対し、めぐりんは、中心部が100円、それ以外は250円。一部区間は2社の方が安くなるが、それ以外はめぐりんの方が3〜5割安くなる計算だ。
これに対し、両備HDは、過当競争が起きると反発したが、国がめぐりん運行を認める見通しとなった。西大寺線などの黒字路線で赤字路線を支えている中、これで年間3億円の減収になるという。そこで、もう赤字路線を支えられなくなったとして、18年2月8日に記者会見して発表した。
廃止届を提出した県内31路線の内訳は、両備バスが全36路線中18路線、岡電バスが全42路線中13路線。20路線を9月30日に、11路線を19年3月31日に順次廃止する予定だ。計31路線は、1日平均約5600人の乗客が利用しているだけに、もしこのまま公共交通手段がなくなれば、影響は大きそうだ。
国の対応次第で、廃止の見直しもありうるとしたが、中国運輸局は18年2月8日夜にめぐりん運行を認可した。
ツイッター上などでは、両備の対抗措置に理解を示し、国の対応を批判する声が多い。
代替の公共交通手段を検討というが、波乱含み
「規制緩和してインフラを民間依存にしてしまえばこうなることは予測できましたよね」
「地方のバス会社でドル箱路線狙い撃ちで100円バスなんてやられたらそりゃこういう対応したくなるのよくわかるわ」
「地域の足を支える会社の足を国が引っ張ってどうするよ。道路局や都市局が地域の足が必要と言ってるのに、運輸は考えないのか。 それとも過疎地バス廃止させて自動運転車を押しつけようという魂胆か」
路線バスについては、2002年の道路運送法改正で、国がバス会社の数を制限しなくなり、参入が自由化された。中国運輸局の旅客第一課は2月9日、「競争を通じてサービスを向上させるのが目的」だと説明し、八晃運輸の認可取り消し可能性について、「まずありません」と否定した。
一方、02年の同法改正で同時に、路線廃止についても許可がいらなくなり、撤退も自由化された。両備の赤字路線廃止については、「手続き上、届け出ることができます。こちらでは、経営判断だと考えています」と話した。
つまり、路線認可と路線廃止は別問題になる認識ということだ。
とはいえ、このままでは、バスがなくなって困る人が出てくる。この点については、次のように説明した。
「今後は、代替の公共交通手段を検討していくことになります。どういった手段がいいか、自治体やバス会社などと議論もする予定です。その中に両備が入ってもいいと考えています。路線廃止は、6か月以上前に届け出ることが義務づけられており、それまでに何とかしたいということです」
もっとも、6か月ぐらいの期間で代替手段が決まらない恐れはあり、波乱含みの展開となりそうだ。