「九尾の狐(きゅうびのきつね)」をご存じだろうか。平安時代の妖怪のことである。栃木県那須町にはこんな伝説が残っている。

平安時代、ある帝に「玉藻の前」という美しい妃がいた。ところが帝は病に倒れ、床に伏せる。陰陽師がこれを「九尾の狐」の仕業と見破ると、「玉藻の前」は狐の姿に戻り、逃げ去った。那須の地まで追われた「九尾の狐」はついに退治され、巨大な石に化身し、毒気をふりまいて、人々に被害を与えたという。後年、この地を訪ねた「源翁」という僧が一喝すると、石は割れて飛び散り、一つがここに残ったという。それが「殺生石」と伝えられている。

この「九尾の狐」をキャラクターとするユニークなプロジェクトの企画が、2017年11月21日、那須町観光協会から発表された。いったいどんなプロジェクトなのか?

姫川明輝さんが描く「九尾狐」の妖しい世界とは?


姫川明輝さん描き下ろし「九尾狐」イメージ・イラスト(project 9b@NASU_Akira Himekawa 2017)

上のイラストをご覧いただこう。「ゼルダの伝説」などで知られる、漫画家・イラストレーターの姫川明輝さん描き下ろしの「九尾狐」キャラクターのイメージ・イラストだ。姫川さんがアートディレクターとして、古代から伝わる「九尾狐」の妖しい世界を、現代の那須町に蘇らせようという試みである。

具体的には、那須のパワーと神秘の源として君臨する「九尾狐」キャラを、町内各地に設置した「スポット」に掲示する。次に、「九尾狐」キャラにスマートフォンをかざすと、多言語音声(日・英・中)による観光案内が聞ける。そして、「九尾狐」キャラと一緒に写真が撮れ、モバイルスタンプラリーが楽しめる! といった内容だ。

つまりAR(拡張現実)デジタルコンテンツとモーション動画を駆使して、那須を知る、那須を楽しむ情報発信を企画しようというわけだ。「プロジェクト9b」と称している。2018年4月1日、スタート予定だそうだ。


殺生石(Katorisiさん撮影、Wikimedia Commonsより)