マイナーリーグ公式サイトも報じたルーカス・エルツェッグによる隠し玉プレー【画像はサイトのスクリーンショットです】

写真拡大

「スポーツ界の名珍場面総集編」…5月にMLBマイナーリーグで起きた“史上最長の隠し球”

 2017年のスポーツ界を沸かせた名シーンを連日にわたって振り返る「名珍場面2017」。米大リーグ・MLBのマイナーで5月に起きた「最も忍耐強い隠し球」。内野手の“40秒の名演技”で走者を欺き、アウトを取った瞬間を球団公式ツイッターが動画付きで紹介し、米メディアが特集するなど“史上最長の隠し球”として大きな話題を呼んだ。

 いったい、いつまで粘るのか。観る者も我慢比べになりそうな隠し球を炸裂させたのは、ブルワーズ傘下1Aにあたるカロライナ・マッドキャッツの三塁手ルーカス・エルツェッグだ。

 5月3日の試合だった。二塁走者が三盗を試みると、エルツェッグはベースカバーに入り、走者にタッチしたが間に合わず。判定はセーフとなった。しかし、これがドラマの幕開けの合図だった。エルツェッグはグラブにボールを入れたまま、すぐに投手に返球……したかと思いきや、右手からボールは放たれなかった。

 この瞬間、塁上の走者は屈んでスライディングしたズボンの裾を直しており、目線は足元にあった。“第一関門”をクリアしたが、アクシデントが起こる。何食わぬ顔をして三塁ベースに戻り、走者に声をかけるような仕草を見せたエルツェッグ。しかし、罠に気づいていない走者は手首のバンテージを直すなどして、なかなかリードを取らなかったのだ。

投手方向を見て、足場をならし、迫真の演技で…最後は猛然ダッシュ

 すると、エルツェッグは2〜3歩離れ、投手方向に視線を向けた。足場をならすなど迫真の演技を繰り返し、チャンスを待った。そして、いよいよ走者がベースから足を離した瞬間だった。獲物を捕らえるかのように、猛然と走り出した。異変に気付いた走者は慌ててベースに戻ったが、タッチが間一髪早かった。

 走者が茫然とする中、グラブを高々と掲げてアウトをアピール。見事にトリックプレーを成立させた。リーグ公式ツイッターも長々とした隠し球の一部始終を動画付きで紹介。映像を見ると、最初に送球を受けてから、タッチをするまで実に40秒。通常ならもう少しスムーズに成立しそうなものだが、なんとも忍耐強い名演技によって、隠し球は生まれた。

 米スポーツ専門局「FOXスポーツ」は「ブルワーズのマイナー選手による、最も忍耐強い隠し球」と見出しを打って特集。記事では「ルーカス・エルツェッグは非常に忍耐強い人間に違いない。木曜日の試合でそれを明らかにした。彼は我々が見てきた中で最も長々と時間のかかったトリックプレーをやってのけた」と説明している。

 このプレーはマイナーリーグの公式ツイッターでも公開されるなど一躍、注目の的に。隠し球という戦略には賛否あるかもしれないが、それを遂行するために“40秒の名演技”をやり抜いた執念は称賛されてもいいだろう。エルツェッグは今季のマイナーリーグで屈指の“主演男優”となった。