しまむらの2017年3〜8月期は実店舗の売り上げが伸びず、通期の業績予想を下方修正した(撮影:梅谷秀司)

「ネット通販(EC)でうちの商品を売ったほうが、間違いなく知名度にプラスになるとは思っている。だが、すぐにやりますよ、とはならない」

カジュアル衣料大手のしまむらが10月2日に開いた2018年2月期の中間決算説明会。その席上で野中正人社長は、インターネット通販への本格的な参入は現時点で予定していないと言い切った。

アパレル競合各社はゾゾタウンに追随

スタートトゥデイが運営する「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」が、ネット通販旋風を日本のファッション市場に巻き起こした。これに追随する形でアパレル各社がこぞってネット通販に参入する中、売上高で業界第2位のしまむらの動向は注目を集めている。

しまむらでは、「裏地あったかパンツ」などの大量に売れるコア商品の導入を進めているが、商品展開は低価格かつ少量多品種が基本。商品の入れ替えが早く、店舗によって品ぞろえも異なる。それだけに実店舗でさまざまな商品を手に取りながら、買い物をしてもらうことに強いこだわりを持っており、ネット通販に力を入れる同業他社とは一線を画してきた。

とはいえ、ネット戦略の重要性は増している。野中社長も「ECをやらないと時代遅れ。手をこまぬいていると、やられっぱなしになる」と認め、将来的にネット通販へ参入する可能性は否定しない。来年には「“客注システム”を新しくして、ネット通販に似たイメージのものを作っていく」(野中社長)という。

客注とは、店頭に在庫がない商品を他店などから取り寄せること。しまむらが検討しているのは、客がネットで注文した商品を指定の店舗に届け、店頭で受け取りと決済をする仕組みだ。店頭にあるものすべてを対象とすることは難しいため、ネットに掲載する商品などの詳細は今後詰めていく。

ネット通販は、スマートフォンを操作するだけで自宅まで届けてもらえる手軽さが魅力。その分、しまむらの取り組みがどこまで消費者の需要を掘り起こせるかは不透明だ。新たなシステムの成果を確認したうえで、本格的なネット通販への参入について今後検討していくとみられる。

EC強化ではなく、あくまで実店舗での売り上げ拡大を重視するしまむら。だが、その実店舗の業績がふるわない。

頼みの実店舗が振るわず減益

2017年度中間期(3〜8月期)の決算は期初計画を下回り、売上高2841億円(前年同期比1.1%増)、営業利益238億円(同5.2%減)と増収減益で着地した。


野中正人社長は、実店舗の伸び悩みの要因としてネット通販の台頭があることを認めた(写真は2016年4月の決算説明会、編集部撮影)

苦戦した要因は、春夏物の売れ行きが悪化したことだ。上期はテレビCMの本数を増やすなど広告宣伝を強化したが、会社側が想定していたような客数増にはつながらなかった。3〜4月に気温が上がらなかったこともあり、とりわけTシャツなどの婦人用のトップスの販売が低迷。パートやアルバイトの店員の人件費上昇も重なった。

客単価も前年と比べ下がっている。消費者が低価格商品を求める傾向は強まってきており、現状では客単価の回復を期待することは難しい。下期は、割引価格や特価商品が強調されたチラシを展開し、客数の増加に向けて立て直しを図る構えだ。

野中社長は、ネット通販の台頭が売り上げの伸び悩みに与えた影響について「ゼロではない。若干はあると思う」と話す。そのうえで、店舗数の拡大は今後も続ける方針を強調した。

コスト増大に加え、消費者の低価格志向という逆風が吹く中、「実店舗重視」の姿勢でどう成長を図るのか。ネット通販の勢いに負けない戦略が求められる。