街を歩いていると、時々白い杖を持って杖で前を探りながら歩いている人を見かけることはありませんか?探りながらでなくても白い杖を持って歩いている人がいたら、さりげなくちょっと注意して見守ってみたり、という方も多いと思います。

筆者の友人にも白杖を持っている人がいます。その人は完全に目が見えない「全盲」ではなく、視力が日常生活に支障をきたすくらいまでになってしまっている、いわゆる「弱視」または「ロービジョン」と言われている人です。

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■白杖を持っているのはどんな人?

白杖を持つ人というのは身体障害で安全に道路通行ができない人が携行するものです。視覚障害者だけでなく聴覚障害、肢体不自由の人も使うことができます。
これは道路交通法でも定められており、白杖を持っている人は何らかのハンディキャップがあり健常な人よりも自由に行動がしにくい事が多くあります。

■「弱視」「ロービジョン」とは?

全く目が見えない状態ではなく、目の前に大きく文字を出せばかろうじて読める状態だったり、光だけなら分かる状態だったり、動くものは認識できるがはっきりと分からない状態であったり、視野がごく一部しか見えなかったり、その症状は実にさまざまです。

お遊びで強い度の入っためがねをかけてみた事はありませんか?目の前がものすごーくぼやけてその辺を見ても分からない様な感じ。メガネをかけてもあんな感じでメガネの立場もない状態の人もいれば、顔から50cm前の模造紙にこぶし大の穴を開けた部分しか見えないという人も。ここではそんな視力に何らかの問題を抱えている人のことをロービジョンと統一します。

■ロービジョンの人が抱えている困りごと

ロービジョンだと全く見えないわけではないので残された視機能を最大限活用する事になります。しかし、白杖を持っていると「=全盲」という認識を健康な人は何故かしてしまいがちです。そのため、白杖を持ちながらスマートフォンを使っていると「見えないくせにスマホ使ってる」という誤解を受ける人も少なくない様です。筆者の友人もよく誤解されているみたいで、「白い杖なんか持ってるけど、詐欺なんじゃねーの?」と心無い言葉を浴びせられた事もあったり白杖を蹴られた事もあったと聞きました。

スマホは、実はロービジョンの人にとって必須アイテムだったりします。ここ数年の技術革新により、スマホを使うことで文字を拡大して読むことができたり、認識された文字を読み上げさせる事で情報を得たりと視覚障害者にとってとても有益なさまざまな機能が搭載されてきています。
暗い場所で明るい画面を見ると目がつらい事、ありますよね?画面の白と黒を反転させる機能を使うとまぶしさを抑える事ができるので視覚障害で強いまぶしさを感じる人にとってありがたい機能なんです。

ここ最近、そんなスマホを活用しているロービジョンの方も大勢いることを伝えようという活動が盛んになってきています。
ハッチさん(@hatch0808)が生み出した白杖の妖精のゆるキャラ「はくたん」や、boyoさん(@boyo_art)が生み出したパンダのキャラクター「よっかちゃん」(※見出し画像)など、「白杖=全盲」のイメージを払拭すべく活動されている方も。ロービジョンの当事者たちが声を上げて活動をし始めています。

■白杖を持つということ

白杖を持つ理由は様々であることは前述の通りですが、白杖を使っている人の大半はロービジョンだったりします。そして先天性の疾患や難病など子どもの頃から視機能の問題を抱えている人もいれば、怪我や緑内障、糖尿病など進行性の病気により視力を奪われる人もいます。
人生の途中で視力を奪われる…想像した事、ありますか?自分の目はまだみえる、と視力が落ちていてもそれを受け入れられない人も多くいるかもしれません。その中で白杖を持つという事は自分の視機能の低下を受け入れざるを得ない状態で、受け入れること自体非常に勇気がいることだと思います。白杖を持つことを選択するというのは、持つ人自身と、持っている人の周りの両方に対しての安全のための選択なのです。とても詐欺で持つことなんてできません。

■白杖を持っている人が困っていたら…

白杖の方が困っている時に出すSOSサインというものがあります。サインがあろうがなかろうが、困っていそうならば声をかけてほしいのですが、このSOSが出ている時には本当に困っていると考えてください。「白杖SOS」のサインは、白杖の方が杖をまっすぐ掲げている状態。

この白杖を真っ直ぐ掲げるサインは、社会福祉法人福岡県盲人協会が提唱し、そのサインを表すマークが内閣府のHPにも掲載されました。しかし、視覚障害のある当事者間でも浸透はしておらず、この行為自体には賛否両論です。

白杖というものは視覚障害者にとって目の代わりとなる大切なもの。その白杖を地面から離すという事は、例えるなら「高くて狭い踏み台の上に目隠しで置いておかれる」状態のようなものです。そのような大変恐怖感の強い状態をおしてまでこのシグナルを出す必要があるのか…未だ意見は分かれています。ただし実際にこのSOSを使う方はいらっしゃいます。そこで知っておきたいのが「白杖SOS」を見かけたときのサポートの仕方。

【視覚に障がいのある方を支援する際は次のことに留意してください!】
・まず、正面から「どうかなさいましたか。」などと声をかけてください。
・お困りごとの内容により、ご自分の肩やひじなどに手をかけてもらい、ゆっくり誘導するなどの支援をしてください。
・白杖を持つ手にふれないようにしてください。
(引用:岐阜市HP 「白杖SOSシグナルの普及啓発について 」より)

後ろのほうから声をかけると気が付きにくかったり、びっくりして転倒するリスクもあります。正面からはっきりと声をかけましょう。
道を案内する場合、歩調に合わせながらゆっくりと歩き、「○○mくらい先を△の方向に曲がります」など適宜分かりやすく案内するとスムーズです。また、方向を示すときは「○時の方向」と時計盤の方向を使った案内をすると分かりやすいです。
よほどの危険がない限り、いきなり手や体に触ると大変びっくりしてしまいます。介助する時は声をかけてから手に触れてくださいね。

ちょっと長くなってしまいましたが、誰もが過ごしやすい社会を考えたとき、真のバリアフリーを考えたとき、この事をちょっとでも思い出して頂けると幸いです。
そして誰もが安全に、伸びやかに生活できる環境が整うことを願っています。

<参考・引用>
福岡県点字図書館
岐阜市「白杖SOSシグナルの普及啓発について」
内閣府「障害者に関するマークについて」
boyo-art

<画像提供>
株式会社石井マーク(@ishiimark_sign)
ハッチ(@hatch0808)
boyo-art 〈公式〉(@boyo_art)

(看護師ライター・梓川みいな)