今夜放送「楽園追放」水島精二監督、虚淵玄脚本、80年代OVAスピリッツ満載のゴリゴリSFエンタメ
3月26日19時から、映画『楽園追放-Expelled from Paradise-』が、TOKYO MXで地上波初放送。東映アニメーション製作のフル3DCGアニメーションだ。
楽園とは何か。感覚とは何なのか。人間の自我とは何か。
ゴリッゴリのSF要素を詰め込んだ、水島精二監督、虚淵玄脚本の作品。
作中では人体が感じる「娯楽・快楽」の話題が出てくる。
この映画も、視覚と聴覚を通じて「気持ちいい」映像づくりに、力を注いでいる。
レールガンを撃つシーン。弾道が地球の重力に引っ張られるのを計算しながら、見えない方向にいる相手をロックオンして、撃ち抜く。
廃墟の町、弾丸を避けつつ高高速移動で戦う機動外骨格スーツ・アーハン。カメラアングルがぐりぐり動く
ミサイルは、揺れる弾道をカメラワークで捉える、「マクロス」などでおなじみの板野サーカス。
アニメを見て成長してきた人の体に染み込んでいる「こういう動きを見たい」願望を叶えてくれる。
前半は電脳世界保安官アンジェラと地上の人間エージェントディンゴのロードムービー、中盤は謎の存在フロンティアセッターとの邂逅がメイン。
特に前半では、2014年度においての、日本の3DCGアニメーションが模索し続けている「いかに3DCGで日常芝居を演出するか」問題に取り組んでいる。
演出・京田知己「普通にお芝居をつけるとお人形になっちゃうんです。でもうまい人が手を加えるとぐっと手書きっぽくなる」
監督・水島精二「アニメ的なノウハウ─いわゆるタメ(動き始める前の静止した時間)とツメ(動き終わりの原則の動き)を徹底したり、3DCGの人たちがこれまでなかなか踏ん切りがつかなかった動作の中でちゃんと止を入れることの重要性とかを徹底してやれた」
(BDインタビューより)
日本のリミテッドアニメーション(制限の中でうまれた、記号性のある表現)の動きは、リアルな人間のトレースではない。ピクサーなどの海外3DCGとも違う。
2Dアニメ寄せで動きをデフォルメ。あえて動きを止めることで、次のカットのアクションを見せる、緩急を計算する。
この映画では、表情をおおげさにつける演出が一つのテーマだったようだ。
アーハン搭乗時のアンジェラの表情は、数多くのモデリングをして、大胆に動く。
一方で、次の表情が大事、というところではタメとして2Dアニメ的に表情が止められている。アンジェラは考え事の多いキャラクターなので、タメのシーンは印象に残る。
このあたりの試みは、昨今の3DCGアニメでどんどん発達中。
中でも4月から放映される東映アニメーションが作るセル調フルCGアニメ『正解するカド』は、『楽園追放』の技術を活かしていく方針らしい(アニメ!アニメ!ビズ)
脚本・虚淵玄「人間からほど遠い存在の視点を通じて、人間を描くとそこに人間性が浮き彫りになったりはします。今回であればフロンティアセッターですし、ほかの作品でいうと『まどか☆マギカ』のキュゥべえがそうですね」
80年代サイバーパンクの影響を受けたという虚淵玄が、「人間性」を描こうとしているのがこのアニメ。
だから、映像は新しいのに、なんだか懐かしいところが多い。
AIとは、感覚とは、感情とは、といった人類の精神のありかたを、フロンティアセッター、アンジェラ、ディンゴという全く別の立ち位置のキャラの視点から考えていく。
アンジェラは理想の戦闘ヒロイン像として、画面の中心に映しだされる。
ダンディながらも情熱的ソウルの男ディンゴが、ポイントごとにビシッと決める。
後半では80年代にデビューした声優、高山みなみ、三石琴乃、林原めぐみが登場。
緩急が大きく、思想の入った物語を、ところどころ実験的に、柔軟に作るスタイル。
演出の京田知己はこれを、80年代のアニメーターが持っていたOVAスピリッツだと言う(BDインタビューより)。
主人公のアンジェラを「かわいい」に特化する試みが、あちこちに見られる。
この映画は、「尻」抜きには語れない。
むっちりしたふとももと、ぷりんとした尻の質感。肉の表現と映し方はとてもフェティッシュだ。
実は作中では、そこまで映っていない。だが、わずかなカットからあふれるアンジェラの尻度の高さが観客の心をガッチリとつかみ、ネット上のファンのツイートには「尻」の文字が飛び交った。
スタッフは彼女のフェチズムについて相当強く意識していたようで、上映時には等身大アンジェラを作成、丸みを帯びた身体を再現している。
媚びを売るわけではないのに、自然に品を作っている、アンジェラの止めポーズカット。
真面目で働き詰めの、大人な保安官としての側面。
肉体を得たことによる新発見で、子供のように驚く様子。
性格のコントラストが、コロコロ変わる表情と、柔らかな仕草で演出される。
かわいいアンジェラベスト3に入ること間違い無しの、地上でうどんを食べるシーン。
一味をかけた時、肉体の体を持ってはじめて「おいしい」と感じ、顔がパァッと明るくなる。
長過ぎる階段を息を切らしながら登るシーンは、キャラのクタクタな動き、下からアンジェラを見る尻のアングルと、こだわりの宝庫。
ところどころプライドが高く、頻繁に顔をしかめる。釘宮理恵の演技は、前向きで気高い。
コケティッシュなアニメ文法表現が、意識的に盛り込まれたキャラだ。
一方でフロンティアセッターが、表情もなにもないのにめちゃくちゃ愛しく描かれているのは、対称的で面白い。
音楽面では、テーマソングの「EONIAN-イオニアン-」の使い方が、とてもいい。
作中ではいろいろなバージョンで挿入されているので、初見の人は意識してみると楽しめる部分が増えるはず。
(たまごまご)
楽園とは何か。感覚とは何なのか。人間の自我とは何か。
ゴリッゴリのSF要素を詰め込んだ、水島精二監督、虚淵玄脚本の作品。
ロボットアニメのおいしいとこ濃縮
作中では人体が感じる「娯楽・快楽」の話題が出てくる。
この映画も、視覚と聴覚を通じて「気持ちいい」映像づくりに、力を注いでいる。
廃墟の町、弾丸を避けつつ高高速移動で戦う機動外骨格スーツ・アーハン。カメラアングルがぐりぐり動く
ミサイルは、揺れる弾道をカメラワークで捉える、「マクロス」などでおなじみの板野サーカス。
アニメを見て成長してきた人の体に染み込んでいる「こういう動きを見たい」願望を叶えてくれる。
3DCGによる日常芝居
前半は電脳世界保安官アンジェラと地上の人間エージェントディンゴのロードムービー、中盤は謎の存在フロンティアセッターとの邂逅がメイン。
特に前半では、2014年度においての、日本の3DCGアニメーションが模索し続けている「いかに3DCGで日常芝居を演出するか」問題に取り組んでいる。
演出・京田知己「普通にお芝居をつけるとお人形になっちゃうんです。でもうまい人が手を加えるとぐっと手書きっぽくなる」
監督・水島精二「アニメ的なノウハウ─いわゆるタメ(動き始める前の静止した時間)とツメ(動き終わりの原則の動き)を徹底したり、3DCGの人たちがこれまでなかなか踏ん切りがつかなかった動作の中でちゃんと止を入れることの重要性とかを徹底してやれた」
(BDインタビューより)
日本のリミテッドアニメーション(制限の中でうまれた、記号性のある表現)の動きは、リアルな人間のトレースではない。ピクサーなどの海外3DCGとも違う。
2Dアニメ寄せで動きをデフォルメ。あえて動きを止めることで、次のカットのアクションを見せる、緩急を計算する。
この映画では、表情をおおげさにつける演出が一つのテーマだったようだ。
アーハン搭乗時のアンジェラの表情は、数多くのモデリングをして、大胆に動く。
一方で、次の表情が大事、というところではタメとして2Dアニメ的に表情が止められている。アンジェラは考え事の多いキャラクターなので、タメのシーンは印象に残る。
このあたりの試みは、昨今の3DCGアニメでどんどん発達中。
中でも4月から放映される東映アニメーションが作るセル調フルCGアニメ『正解するカド』は、『楽園追放』の技術を活かしていく方針らしい(アニメ!アニメ!ビズ)
最新の懐かしさ
脚本・虚淵玄「人間からほど遠い存在の視点を通じて、人間を描くとそこに人間性が浮き彫りになったりはします。今回であればフロンティアセッターですし、ほかの作品でいうと『まどか☆マギカ』のキュゥべえがそうですね」
80年代サイバーパンクの影響を受けたという虚淵玄が、「人間性」を描こうとしているのがこのアニメ。
だから、映像は新しいのに、なんだか懐かしいところが多い。
AIとは、感覚とは、感情とは、といった人類の精神のありかたを、フロンティアセッター、アンジェラ、ディンゴという全く別の立ち位置のキャラの視点から考えていく。
アンジェラは理想の戦闘ヒロイン像として、画面の中心に映しだされる。
ダンディながらも情熱的ソウルの男ディンゴが、ポイントごとにビシッと決める。
後半では80年代にデビューした声優、高山みなみ、三石琴乃、林原めぐみが登場。
緩急が大きく、思想の入った物語を、ところどころ実験的に、柔軟に作るスタイル。
演出の京田知己はこれを、80年代のアニメーターが持っていたOVAスピリッツだと言う(BDインタビューより)。
アンジェラをかわいくする追求
主人公のアンジェラを「かわいい」に特化する試みが、あちこちに見られる。
この映画は、「尻」抜きには語れない。
むっちりしたふとももと、ぷりんとした尻の質感。肉の表現と映し方はとてもフェティッシュだ。
実は作中では、そこまで映っていない。だが、わずかなカットからあふれるアンジェラの尻度の高さが観客の心をガッチリとつかみ、ネット上のファンのツイートには「尻」の文字が飛び交った。
スタッフは彼女のフェチズムについて相当強く意識していたようで、上映時には等身大アンジェラを作成、丸みを帯びた身体を再現している。
媚びを売るわけではないのに、自然に品を作っている、アンジェラの止めポーズカット。
真面目で働き詰めの、大人な保安官としての側面。
肉体を得たことによる新発見で、子供のように驚く様子。
性格のコントラストが、コロコロ変わる表情と、柔らかな仕草で演出される。
かわいいアンジェラベスト3に入ること間違い無しの、地上でうどんを食べるシーン。
一味をかけた時、肉体の体を持ってはじめて「おいしい」と感じ、顔がパァッと明るくなる。
長過ぎる階段を息を切らしながら登るシーンは、キャラのクタクタな動き、下からアンジェラを見る尻のアングルと、こだわりの宝庫。
ところどころプライドが高く、頻繁に顔をしかめる。釘宮理恵の演技は、前向きで気高い。
コケティッシュなアニメ文法表現が、意識的に盛り込まれたキャラだ。
一方でフロンティアセッターが、表情もなにもないのにめちゃくちゃ愛しく描かれているのは、対称的で面白い。
音楽面では、テーマソングの「EONIAN-イオニアン-」の使い方が、とてもいい。
作中ではいろいろなバージョンで挿入されているので、初見の人は意識してみると楽しめる部分が増えるはず。
(たまごまご)