約2年ぶりの代表復帰で結果を残した今野。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト特派)

写真拡大 (全2枚)

 UAE戦はホ-ムでの屈辱を晴らしたばかりではなく、試合を「任せられる選手」がハッキリと見えたゲ-ムになった。
 
 大迫勇也は、改めて現代表に欠かせないFWになった。前半開始早々にシュ-トを放つなどゴ-ルを狙う姿勢はもちろん、ポストプレ-が出色の出来栄えだった。2点目のゴ-ルは大迫が競り合って、しっかりと久保裕也につなげたことから生まれている。
 
 自らはゴ-ルを決めることができなかったが、縦へのボ-ルを懐深くキ-プすることで時間とリズムを生んでいた。守備面ではファ-ストプレスとしてコ-スを限定する役割を担っているが、交代するまで運動量は衰えることがなかった。ハリルホジッチ監督から信頼され、「任せられる選手」になっている。
 
 久保は、1ゴ-ル・1アシストと所属クラブのヘントで見せているプレ-を出力した。アグレッシブな原口元気、大迫、久保、の3人のユニットは今後もチ-ムのファ-ストセットになると考えてもいいだろう。
 
 この試合で最も攻守に活躍したのがインサイドハ-フの今野泰幸だ。G大阪は今シ-ズンから3バックながら変則の4バックを採用。遠藤保仁をアンカ-に置き、今野は倉田秋とともにインサイドハ-フでプレ-している。そのポジションについて今野は「運動量が求められるし、走らないといけない。チャンスになると前に行かないといけないし、ピンチになったらダッシュで戻らないといけない。試合を読む力が求められるポジションですごく大変ですけど、成長できるポジションだと思います」と言っている。
 
 UAE戦の今野はまさにその仕事を全部こなした。オマル・アブドゥルラフマンのマ-クをこなしつつ、ボ-ルホルダ-を潰しにかかった。前半、点取った後はラインが引いて思うように展開にできなかった時間もあったが後半は修正し、倉田が入ってきてからはまるでG大阪でプレ-しているように中盤を引き締めた。

 圧巻は2点目のゴ-ルで、今野らしい嗅覚で原口元気が相手DFを連れてニアに飛び込むのを分かってファ-サイドで待っていた。UAEのやる気を喪失させる決定的なゴ-ルだった。
 今野の活躍は長谷部誠が怪我で欠場したことの副産物だが、4-3-3のオプションが出来たのは非常に大きい。もしかすると今後も4-3-3でいく可能性が出てきたのではないだろうか。もともと今野は長谷川健太監督が「今ちゃんがいたらからこそ3ボランチのやることができた」というほどインサイドハ-フが適役だった。ハリルホジッチ監督もG大阪の試合でそれを実感しての起用だった。UAE戦では持味がよく出ていたし、今野も「任せられる選手」になったと言える。
 
 UAE戦はワールドカップ最終予選折り返しの最初の試合になったが、スタメンで出場した香川真司は影が薄く、途中出場した本田圭佑、岡崎慎司はいまひとつチ-ムに乗り切れていない感があった。そもそも久保と大迫が痛まなければ本田と岡崎の出場機会があったかどうかも分からない。彼らの存在自体がハリルホジッチ監督には重要なのかもしれないが、現状では試合に出ても今野ほどの“違い”を見せることはできなかった。
 
 いずれ彼らのような経験のある選手が必要な場面が出てくるだろう。しかし、少なくとも今はスタメンの枠には入らないし、4-3-3であれば本田と香川は適性ポジションがない。

 であれば、今野や倉田ら国内組の選手が存在感を示したのだから、Jリ-グで活躍している選手、例えば小林悠や斎藤学らにもっとチャンスを与えるべきであろう。重鎮や試合に出場できていない選手をベンチに座らせておくよりも、遥かに成長を望めるはずだ。そうして「任せられる選手」を増やしていく重要性をUAE戦で今野が示してくれた。
 
文:佐藤 俊(スポーツライター)