本当に傑作か「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」を超ていねいに検証してみた
3月3日に発売されたNintendo Switchソフトの中で、最も注目を集めているゲームは『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』だろう。昨年30周年を迎えた人気シリーズの新作が、新機種のローンチタイトルとして出たのだ。
本作はWiiU版も出ているが、Switch版でレビューをしていく。
30周年を迎えただけに、『ゼルダの伝説』シリーズはたくさん発売されている。そうなると、前作などを遊んでいないとゲームの背景がわからないのではと不安に思う人もいるかもしれない。だが、その心配はない。
ゼルダの伝説シリーズで覚えておくことは、アクションゲームで、主人公の名前が「リンク」で、「ハイラル王国」を舞台に、「ゼルダ姫」を助け、「ガノンドロフ(ガノン)」を倒す。これだけだ。もうひとつ覚えるとしたら、触れた物の願いを叶える「トライフォース」という秘宝が、物語のキーアイテムになる、で大丈夫。
ほとんどの作品が、パラレルワールドもしくは別の時代となっていて、ハイラル王国の王女ゼルダ姫がガノンドロフにとらわれているのを主人公リンクが助け出し、ガノンドロフを倒すという構造になっていると思うといいだろう。
今回ももちろん主人公はリンク。目を覚ますと、そこは見知らぬ洞窟の中。記憶もない。そのとき聞こえてきた美しい女性の声に導かれ、洞窟の外に出てみると、そこには広大な世界が広がっていた……
というオープニングで始まる『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』。
リンクを操り、アイテムを駆使し、敵と戦い、さまざまな謎や仕掛けを解いていく。
最初のうちはできることが少ないが、徐々にできることが増えていく。操作は若干複雑だが、ゲーム中にいつでも基本操作を確認できる。
敵から攻撃を受けたり、高いところから落ちたりするとハートマークで表されるライフが減少し、全てなくなると死んでしまう。
意外なほどよく死ぬので、ゲーム中は一定の間隔でオートセーブが行われ、死んでも比較的簡単に元のところまで復活できる。
崖を登ったり、泳いだり、重いものを押したりするときに消費されるのが「がんばりゲージ」。いわゆるスタミナで、これらの行動をしつづけると減っていき、0になるとしばらく動けなくなってしまう。安静にしているとすぐに回復する。
この「がんばりゲージ」があるおかげで、たとえば山を越えようとしても足りないとか、崖を降りようとしても途中で力尽きたりすることで、行動範囲がある程度決まるようになっている。
本作でかなり特徴的なのは、武器や盾はある程度使うと壊れてしまうことだろう。何回か戦闘をすると、すぐに壊れてしまう。
敵を倒したときに、敵が使っていた武器を拾ったり、フィールドに落ちている物を拾って新たな武器にしなければならない。常に武器を補充するので、その辺にいるいわゆる雑魚敵と戦う動機にもなっている。
冒険が進むとすぐに、ギミックを攻略するためのアイテムが手に入る。たとえばマグネットパワーを発して金属のものを持ち上げたり、水を凍らせて柱を作ったりすることができる。これらのアイテムを駆使して、各地にある祠(ダンジョン)内の仕掛けを解いていく。
今までのシリーズでは、剣で草を刈ったり、壺を割ったりするとハート回復アイテムや、ルピー(お金)が手に入ったが、今回は手に入らない。回復は食べ物を食べて行う。フィールド上の木にリンゴがなっていたら、それをもいで回復。狩りをして動物を倒せば肉が手に入るので、それを食べて回復という感じだ。これらの食材は、料理をすることでより効率よく回復できる。
また、温度や音の概念も導入されている。右下には温度計が表示されていて、いま感じている温度がわかる。寒すぎてもライフは減るし、暑すぎてもダメなので、ときどき注意しなければならない。音は、大きな音をたてて行動をすると発見されやすくなるので、敵が見えたときにはそーっと移動したりする目安にできる。
本作では「オープンエアー」という仕組みが導入されている。いわゆるオープンワールドのようなもので、街に入っても画面の切り替えはないし、どこまで歩いても読み込みが入ることなくひたすら移動できるし、何にでも触れるというもの。今までのシリーズでは、一見どこまでもいけるようでありながら、進めないところや、触れない物があった。
だが、今回は何にでも触れるし、どこへでも行ける。行こうと思えばいきなり最後のボスのところに行くことも可能だ。祠を攻略する順番も決まっているわけではなく、どこから挑戦してもいい。攻略に必要なアイテムは、序盤のうちにほぼ手に入っている。行くところがわからなければ、いつでも「冒険手帳」から現在の目標を確認できる。
自由度は移動だけではない。このアイテムがあるのなら、こういうことができるのでは? と思ったことが、たいていできてしまう。
たとえばたき火があり、手元には木の矢がある。ここでたき火に近づくと、矢の先に火をつけて、火矢を作れる。そのまま火矢を爆弾のつまった樽に打ち込み、爆発させる。
木の枝や木製の棍棒に火をつけ、燃えた武器で殴って大ダメージを与える(ただしすぐに壊れる)。
火矢や松明を使い、草を燃やすと、風が吹いていればどんどん火が燃え広がり、野焼きができる。ここに敵を巻き込んで燃やすことも可能。なんだか燃やす話ばかりだが、序盤はとにかく火を自由に扱えることに感動し、ひたすら燃やしてばかりいた。
そのため、物語を進めるための方法も1つだけではない。たとえばとても寒くて凍えてしまう場所に行くのだって、寒さ対策アイテムを探す人もいれば、体が温まる料理を開発して食べながら突破する人もいれば、松明に火をつけて暖をとりながら進む人もいる。人によって攻略法が違うため、プレイ後に友人と「あそこはどうやって突破した?」と話すのも楽しい。
単なるオープンワールドなだけではなく「プレイヤーがやりたいことがなんでもできるけれども、それがエンターテイメントにつながっている」ということからこの仕組みが「オープンエアー」と名づけられた。その通り、現在のところは、こういうことができたらいいなと思うことがほぼできている。
そのため、広大なフィールドを適当に散策し、食材などを集め、料理をしているだけでも楽しいし、世界に没入できる。
自由度が高いということは、それだけ何をしていいのかわからないときもある。そこで使うのが、最初から持っているシーカーストーン。いつでもマップは見られるし、次に行くところの印もつけられるし、好きにピンを立てられるので高いところから望遠鏡を使って目星をつけてピンをつけて自分なりの目印をつくってもいい。
本作は、文字通り「なんでもできる」ゼルダの伝説だ。そして、キャラクターが自分の思い通りに動くということが、これほど面白いことなのかということを実感させてくれる。こういうことがもしかしたらできるのでは、と思ったら、やらずにはいられない。次から次へとやりたいことがでてくる、そんなゲームだ。
Switch版で遊んでいるのだが、テレビの大きな画面でJoy-Con Proで遊び、少し疲れたら休憩として寝っ転がって携帯モードで遊ぶ。というぐらいには、はまっている。まだあまり外には持ち出していないが、電車での移動中などでもそのまま続けて遊べるのはうれしい。
テレビで遊んでいると、若干だが3D酔いをしたので、そこだけは留意した方がいいかもしれない。携帯モードだと今のところ3D酔いはしていない。
現時点ではまだストーリー的に序盤部分までしか遊んでいないのだが、それでもゲーム好きなら間違いなく「買い」と断言してもいい傑作だ。
(杉村 啓)
本作はWiiU版も出ているが、Switch版でレビューをしていく。
『ゼルダの伝説』はシリーズのどこから始めてもいい
30周年を迎えただけに、『ゼルダの伝説』シリーズはたくさん発売されている。そうなると、前作などを遊んでいないとゲームの背景がわからないのではと不安に思う人もいるかもしれない。だが、その心配はない。
ほとんどの作品が、パラレルワールドもしくは別の時代となっていて、ハイラル王国の王女ゼルダ姫がガノンドロフにとらわれているのを主人公リンクが助け出し、ガノンドロフを倒すという構造になっていると思うといいだろう。
基本システム
今回ももちろん主人公はリンク。目を覚ますと、そこは見知らぬ洞窟の中。記憶もない。そのとき聞こえてきた美しい女性の声に導かれ、洞窟の外に出てみると、そこには広大な世界が広がっていた……
というオープニングで始まる『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』。
リンクを操り、アイテムを駆使し、敵と戦い、さまざまな謎や仕掛けを解いていく。
最初のうちはできることが少ないが、徐々にできることが増えていく。操作は若干複雑だが、ゲーム中にいつでも基本操作を確認できる。
敵から攻撃を受けたり、高いところから落ちたりするとハートマークで表されるライフが減少し、全てなくなると死んでしまう。
意外なほどよく死ぬので、ゲーム中は一定の間隔でオートセーブが行われ、死んでも比較的簡単に元のところまで復活できる。
崖を登ったり、泳いだり、重いものを押したりするときに消費されるのが「がんばりゲージ」。いわゆるスタミナで、これらの行動をしつづけると減っていき、0になるとしばらく動けなくなってしまう。安静にしているとすぐに回復する。
この「がんばりゲージ」があるおかげで、たとえば山を越えようとしても足りないとか、崖を降りようとしても途中で力尽きたりすることで、行動範囲がある程度決まるようになっている。
本作でかなり特徴的なのは、武器や盾はある程度使うと壊れてしまうことだろう。何回か戦闘をすると、すぐに壊れてしまう。
敵を倒したときに、敵が使っていた武器を拾ったり、フィールドに落ちている物を拾って新たな武器にしなければならない。常に武器を補充するので、その辺にいるいわゆる雑魚敵と戦う動機にもなっている。
冒険が進むとすぐに、ギミックを攻略するためのアイテムが手に入る。たとえばマグネットパワーを発して金属のものを持ち上げたり、水を凍らせて柱を作ったりすることができる。これらのアイテムを駆使して、各地にある祠(ダンジョン)内の仕掛けを解いていく。
今までのシリーズでは、剣で草を刈ったり、壺を割ったりするとハート回復アイテムや、ルピー(お金)が手に入ったが、今回は手に入らない。回復は食べ物を食べて行う。フィールド上の木にリンゴがなっていたら、それをもいで回復。狩りをして動物を倒せば肉が手に入るので、それを食べて回復という感じだ。これらの食材は、料理をすることでより効率よく回復できる。
また、温度や音の概念も導入されている。右下には温度計が表示されていて、いま感じている温度がわかる。寒すぎてもライフは減るし、暑すぎてもダメなので、ときどき注意しなければならない。音は、大きな音をたてて行動をすると発見されやすくなるので、敵が見えたときにはそーっと移動したりする目安にできる。
「自由」度が高いオープンエアー
本作では「オープンエアー」という仕組みが導入されている。いわゆるオープンワールドのようなもので、街に入っても画面の切り替えはないし、どこまで歩いても読み込みが入ることなくひたすら移動できるし、何にでも触れるというもの。今までのシリーズでは、一見どこまでもいけるようでありながら、進めないところや、触れない物があった。
だが、今回は何にでも触れるし、どこへでも行ける。行こうと思えばいきなり最後のボスのところに行くことも可能だ。祠を攻略する順番も決まっているわけではなく、どこから挑戦してもいい。攻略に必要なアイテムは、序盤のうちにほぼ手に入っている。行くところがわからなければ、いつでも「冒険手帳」から現在の目標を確認できる。
自由度は移動だけではない。このアイテムがあるのなら、こういうことができるのでは? と思ったことが、たいていできてしまう。
たとえばたき火があり、手元には木の矢がある。ここでたき火に近づくと、矢の先に火をつけて、火矢を作れる。そのまま火矢を爆弾のつまった樽に打ち込み、爆発させる。
木の枝や木製の棍棒に火をつけ、燃えた武器で殴って大ダメージを与える(ただしすぐに壊れる)。
火矢や松明を使い、草を燃やすと、風が吹いていればどんどん火が燃え広がり、野焼きができる。ここに敵を巻き込んで燃やすことも可能。なんだか燃やす話ばかりだが、序盤はとにかく火を自由に扱えることに感動し、ひたすら燃やしてばかりいた。
そのため、物語を進めるための方法も1つだけではない。たとえばとても寒くて凍えてしまう場所に行くのだって、寒さ対策アイテムを探す人もいれば、体が温まる料理を開発して食べながら突破する人もいれば、松明に火をつけて暖をとりながら進む人もいる。人によって攻略法が違うため、プレイ後に友人と「あそこはどうやって突破した?」と話すのも楽しい。
単なるオープンワールドなだけではなく「プレイヤーがやりたいことがなんでもできるけれども、それがエンターテイメントにつながっている」ということからこの仕組みが「オープンエアー」と名づけられた。その通り、現在のところは、こういうことができたらいいなと思うことがほぼできている。
そのため、広大なフィールドを適当に散策し、食材などを集め、料理をしているだけでも楽しいし、世界に没入できる。
自由度が高いということは、それだけ何をしていいのかわからないときもある。そこで使うのが、最初から持っているシーカーストーン。いつでもマップは見られるし、次に行くところの印もつけられるし、好きにピンを立てられるので高いところから望遠鏡を使って目星をつけてピンをつけて自分なりの目印をつくってもいい。
「なんでもできる」ゼルダの伝説は楽しい
本作は、文字通り「なんでもできる」ゼルダの伝説だ。そして、キャラクターが自分の思い通りに動くということが、これほど面白いことなのかということを実感させてくれる。こういうことがもしかしたらできるのでは、と思ったら、やらずにはいられない。次から次へとやりたいことがでてくる、そんなゲームだ。
Switch版で遊んでいるのだが、テレビの大きな画面でJoy-Con Proで遊び、少し疲れたら休憩として寝っ転がって携帯モードで遊ぶ。というぐらいには、はまっている。まだあまり外には持ち出していないが、電車での移動中などでもそのまま続けて遊べるのはうれしい。
テレビで遊んでいると、若干だが3D酔いをしたので、そこだけは留意した方がいいかもしれない。携帯モードだと今のところ3D酔いはしていない。
現時点ではまだストーリー的に序盤部分までしか遊んでいないのだが、それでもゲーム好きなら間違いなく「買い」と断言してもいい傑作だ。
(杉村 啓)