薄毛対策の技術は日々進歩を遂げ、育毛剤や人口頭髪に続き、ついに「食べる育毛剤」、育毛大豆が開発されたということが、農芸化学会で発表されたのだ。

 開発した京都大学大学院農学研究科の教授たちは、もともと高い血圧降下作用をもつ食品開発の研究過程で、ノボキニンという新物質に育毛作用があることを発見。ノボキニンは、鶏卵に含まれるオボキニンというタンパク質のアミノ酸を一部置き換えることで作られ、研究チームは似たタンパク質構造を持つ大豆にこれを応用することで、「食用育毛剤」への道を開いた。

 ん? アミノ酸を一部置き換え?

 そう。じつはこの育毛大豆、遺伝子組み換え技術によって開発されたものなのだ。

 ご存知のように遺伝子組み換え技術は安全面が問われていて、その意見は賛否両論。通常の品種改良の延長線上にあり、薬品や害虫に強いため食糧危機にも対応でき、性質の明らかな遺伝子を組み込むものだから安全だというのが賛成派。逆に反対派の意見は、遺伝子を組み換えることによってどんな副作用がもたらされるか明らかでなく、生態系への影響も確実に懸念され、特定企業の農業支配も起こる可能性もあるというのだ。

そのへんどうなのよ、ということで、研究チームの吉川正明教授にお話を伺った。

「やはり非天然物ですから、薬品としては認められますが、食品として実用化にいたるまでには時間がかかるとは思います。そのため我々は、法律上の薬品と食品の境界線を狙いました。安全面でのはっきりとした研究結果は2週間後くらいにわかる予定です。いい結果が期待されています。ノボキニンは栄養価があり血圧降下作用も絶大です。また、今回のような開発は、長い目で見れば食料資源の問題にも役立つと思っています。」と、吉川教授。

 今はまだ食品と薬品の境界線にあるという育毛大豆だが、食品としての一般販売に向けて着々とその準備は進んでいるという。実用化されようとされまいと、新物質を実際に体に入れるのは一般の人々であるということを、研究者の方々には忘れずにいてほしいと願う
(文/verb)