「コック警部の晩餐会」1話「チャンポンは愛と希望の一杯だった」(え?)

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「いや、絶対ドキドキは絶対しねーよ!「コック警部の晩餐会」第1話

「死幣ーDEATH CASH」や「毒島ゆりこのせきらら日記」など、何かと話題のTBSの『テッペン!水ドラ!!』枠は、主演・柄本佑の「コック警部の晩餐会」が放送されている。

プロ並みの料理を持つ古久星三が、その絶対的な舌と嗅覚で事件を捜査する推理物だ。初回は、“私語禁止”や“最初の一口”はスープなど、様々なルールが存在する頑固親父のラーメンを、古久警部が物怖じせずにダメ出しするところからスタートした。


1話あらすじ


自宅マンションから転落死した旬を過ぎた女優・安城冴子(小野真弓)。担当の猫田刑事(えなりかずき)は自殺の線で捜査を進めていたが、古久警部はなんと遺留品の長崎チャンポン食べることによって、犯人を探し当ててしまう。

推理物の醍醐味と言えば、謎解きと主人公の特異なキャラクターだ。このどちらか、もしくは両方が優れていると名作として名を残すことが出来る。では、この「コック警部の晩餐会」はどうなのだろうか?

古久警部は変人と言えば変人なのだが、古畑任三郎(田村正和)や同じ今期ドラマの推理物であるIQ246・法門寺沙羅駆(織田裕二)と比べると、ややパンチに欠ける印象だ。柄本佑の演技そのものは面白いのだが、キャラ設定自体の変人度が低いのだ。

謎解きパートはどうだろうか?まだ1話のみなので判断し辛いが、それほど凝っているとは言えないだろう。密室殺人でもなければ、犯人にアリバイがあるわけでもない。おまけに絶対的な味覚がなければ解決できなかったわけでもないように思える。歴代の名探偵達なら難なく解いてしまいそうな事件だった。

チャンポンを中心に重厚な演技を披露しあう役者達


では、一体何が見所なのだろうか?それは、緊張と緩和のミスマッチな演出だろう。

遺留品を食べてそこから謎解きというコントチックな設定だけに、各々のキャラクター設定はコミカルになっている。古久警部は、緊張感漂うはずの謎解きシーンで意味無く晩餐会を開くし、その晩餐会では、刑事部長・一条千鶴(藤真利子)がわざわざ着物を着て「大変おいしゅうございます」とか言ってしまう。

なのに殺害回想シーンの会話の間は至ってシリアス。役者陣は鬼気迫る演技を披露し、何やら重々しいBGMが流れる。

安城冴子「私とチャンポン、どっちが大事なの!?答えて!

犯人「・・・チャンポンに決まってんだろぉ!

いや、絶対ドキドキはしないから。

一条千鶴「安城さんにとって、チャンポンは愛と希望の一杯だった

全然良い言葉に聞こえない。

古久警部「人は嘘を吐く。しかし、料理は嘘を吐かない

一体何の話をしているのだろう?

チャンポンの器を持って叫ぶマネジャーの田口(小木博明)。エンディングテーマの17歳の新人アーティスト・HARUHIの寂しげな歌声をラストシーンに被せてくる演出も、壮大な人間ドラマの終焉感を出そうとしてきて、良い具合に腹が立つ。

少なくとも1話目は全うな推理物というより、クスっと笑えるコメディよりに仕上げてきた「コック警部の晩餐会」。今夜放送の第2話は、果たしてどのような路線で攻めてくるのか、期待して観てみよう。

(沢野奈津夫)