デニーズでは3月18日から、朝、ドリンクを注文するとトーストとゆで卵が付いてくるサービスを実施している。

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ドリンクを頼むと無料でトーストとゆで卵が付いてくる――デニーズがそんなモーニングサービスをスタートした。コメダ珈琲など名古屋近郊の喫茶店では定番のサービスに、ファミレスのデニーズが今取り組む理由とは?

3月18日、ファミリーレストランデニーズは、コーヒーなどドリンクを注文するとトーストとゆで卵が無料で付いてくるモーニングサービスを開始した(朝6時から10時まで)。アルコール以外であればどのドリンクでも対象となるが、ドリップコーヒーならば235円(以下、価格はすべて税込)と安価な上におかわり自由。ドリンクバーがある店舗では、329円のドリンクバーで同様のサービスが受けられる。また、バランス良く食べたいという人向けには、103円の追加メニューで「国産野菜のミニサラダ」や「コーンスープ」を提供する。

ドリンクを注文すると、トーストやゆで卵などが“おまけ”としてついてくるのは、名古屋など中京エリアの喫茶店に多いサービスだ。なぜファミリーレストランデニーズがこのサービスを始めたのだろうか。

■コメダ珈琲店の影響は大きい

「名古屋の喫茶店では昔から根付いているサービスですし、なんといってもコメダさんが関東に来たことで、東京でも知られるようになりました」と話すのは、デニーズを展開するセブン&アイ・フードシステムズの広報部。

「コメダさん」とはコメダ珈琲店のことだ。名古屋発祥の喫茶店チェーンで、朝11時までの時間にコーヒー(420円)などのドリンクメニューを注文すると、無料でトースト+α(ゆで卵、たまごペースト、おぐらあんから選択)がついてくるサービスを実施している。

しかし名古屋圏では昔から根付いている“文化”だけに、デニーズもこうしたサービスがあることは以前から把握していたはずだ。「なぜ今?」と聞いたところ、返ってきたのは「モーニングのお客さまが増えているんです」という答えだった。

■モーニングタイムの来客が増えている

一般にファミレスが最も混むのは昼、次が夜で、3番目が朝(残りは午後、深夜、早朝など)。アイドルタイムというほど空いているわけではないが、モーニングタイムに満席というファミレスはほとんどないため、この時間帯の来客が増えれば売上増に直結する。

デニーズでは、2014年に50万人、2015年に45万人、モーニングタイムの客数が増えたという(いずれも前年対比)。こうした流れを受け、2015年3月には「コンビネーションブランチ」(948円)「フルグラ&サラダモーニング」(587円)などのモーニングメニューを強化した。特にコンビネーションブランチは、ミニハンバーグ、スクランブルエッグ、ソーセージ、生ハムサラダ、ベイクドポテトなどが並ぶ、昼食並みに食べ応えのあるメニュー。「ちょっと高くてもしっかり食べたいというニーズに応え、実際に人気もありました」(セブン&アイフードシステムズ広報部)

トースト&ゆで卵サービスも、こうしたモーニングタイム強化策の延長線上にあり、従来のモーニングメニューと両方提供していくという。デニーズには一部、一般店舗よりも店長の裁量が大きく、実験的な試みを行える店舗があり「今回のサービスは、松戸店から上がってきたものです。『実際にやってみたら(モーニングタイムの来客に)効果がありますよ』という声があったので、全国で採用することになりました」(同上)

■シニア層で新たな需要を開拓

モーニングタイムを強化するもう1つの大きな狙いが「シニア」だ。出勤途中でゆったりと朝食をとるのは難しくても、定年退職して、朝の時間にゆとりのある人であればメニュー次第でファミレスに朝食を食べにきてくれる可能性は高まる。

ガスト(299円〜)、ジョナサン(399円〜)、ロイヤルホスト(440円〜)といった他のファミレスでもモーニングメニューを提供しているが、いずれも「メニューを選ぶとセットドリンクが付いてくる」という形になっている。果たして「好みのドリンク+トースト」の名古屋喫茶店方式モーニングは、デニーズによって全国区で根付くだろうか。

(PRESIDENT Online編集部 吉岡綾乃=文)