高知商vs高知工
高知商先発・高橋 大（2年）
「大会前に選手たちには『ノーシードから四国大会に行くぞ』と話をしていました。実際には厳しいところもありましたが、実現できてよかったです」。
高知商・上田 修身監督が8安打8四死球で8点を奪った試合後に胸をなでおろす。準々決勝で高知に対し9回表に勝ち越し点を奪い3対2と競り勝った勢いは中6日が経過したこの試合でも続いていた。
しかしながら、高知商が序盤から磐石であったかといえばさにあらず。「立ち上がりが課題」と指揮官も認める先発左腕・�盒� 大（2年・170センチ67キロ・左投左打・高知市立愛宕中出身）は、初回・高知工先頭打者の横田 謙慎（2年・三塁手・171センチ58キロ・右投左打・高知市立南海中出身）にやや不運な形での左前二塁打を許すと、続く山下 巧大（2年・二塁手・右投左打・172センチ66キロ・いの町立伊野中出身）の捕手前バントも安打に。
さらに山下盗塁後の無死二・三塁から3番・高橋 朋也（2年・右翼手・右投左打・179センチ72キロ・高知中出身）の遊撃ゴロにより10球で先制点を許してしまった。
その裏、高知商はエースが数日前に足首を軽くひねったことにより、先発に抜擢された高知工・宮�� 陸斗（2年・171センチ66キロ・右投右打・171センチ66キロ・いの町立伊野中出身）に対し、２四死球１安打を絡め一死満塁の同点機をつかむも、5番・高橋はレフト線への浅いフライ。チャンスは持ち越されたかと思われた。
が、そこでも集中力を保っていた男が三塁ベース上にいた。1番・遊撃手の中嶋 拓海（2年・右投右打・165センチ56キロ・土佐清水市立清水中出身）。レフトがカットマンでなく、直接セカンドへ送球する構えを見せた瞬間、彼は本塁へ向かって激走。セカンドを経由したボールがホームに届く前に、中嶋は同点のホームを駆け抜けていた。
「練習のときにランナー付きのノックをするときに、走塁でも積極的にいくようにしていたので、タイミングはつかめていました」。正に練習が生んだ好走塁である。「このプレーが大きかった」。上田監督、高知工・高橋 司監督両名が図らずも指摘した瞬間から、形勢は一気に高知商側へ傾いたのである。
かくして準々決勝・高知戦で途中出場から公式戦初打席で決勝打。この試合では「7番・中堅手」に抜擢されると2回裏に技ありの中前打から決勝のホームを踏んだ山田 雅也（1年・右投左打・167センチ64キロ・葛城ボーイズ＜奈良＞出身）をはじめ、その後は野手陣の厚みで3年ぶり41度目の四国大会をつかみとった高知商。そこに中嶋のような「抜け目のなさ」が加わってくれば、上田監督が現役時代の36年前につかんだ四国・センバツ制覇への道のりを辿る徳島県巡礼は、新たな歴史となって更新されることだろう。
（文＝寺下 友徳）
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