東海大相模vs中京大中京

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打ち合いになるも、最後は仲良く幕を閉じた第70回国体

代打・豊田寛(東海大相模)

 今年の決勝は激戦になり、2015年世代のファイナルにふさわしいゲームとなった。 まず先手を掴んだのは中京大中京だった。 1回表、一死一塁のチャンスから3番中村 健人(3年)が適時三塁打で1点を先制すると、さらにワイルドピッチで1点を追加し、2対0とした中京大中京。

 中京大中京の先発・上野 翔太郎(3年)は130キロ〜135キロ前後の速球、スライダー、カーブ、チェンジアップを内外角へ投げ分け、精度の高い投球で、東海大相模打線を打たせて取っていった。

 初回に2点を失った東海大相模の吉田 凌も角度ある直球、縦に鋭く落ちるスライダーのコンビネーションで、リズムの良い投手戦が続いていた。 追加点を入れたい中京大中京は佐藤 勇基(2年)の本塁打で追加点を入れる。

 佐藤は佐藤秀樹(中日二軍投手コーチ)氏の息子として有名な選手だが、攻守ともにバランスが取れた好選手である。 遊撃手としての動きは実に軽快で、スローイングも力強い。そしてややヘッドの重みを利かせたスイング軌道から鋭い打球を連発する選手で、早いカウントから振りに行く積極性に加え、打ち損じしないミートセンスの高さが魅力。来年の愛知県を代表する遊撃手になる可能性を持った逸材だろう。

  上野の完封ペースかと思われたが、8回表、東海大相模が反撃。代打・豊田 寛(3年)の中前安打で出塁。U-18ワールドカップで負傷し、まだ全力で走れない。しかしこの男の一打によりベンチは活気づく。主将の長倉蓮は「豊田の安打でみんながよっしゃいける!という雰囲気になっていましたね」 その後、東海大相模は一死満塁のチャンスを作り、4番長倉が打席に立った。「4番を打たせてもらっているので、何とか結果を残さないといけないと思いました」と気合いを入れて臨んだこの打席。長倉は2点適時打を放ち、3対2と1点差に迫ると、さらに一死一、二塁から磯網 栄登(3年)の同点適時打で試合を振り出しに戻す。そして吉田 凌の適時打で逆転に成功する。

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賞状を受け取る長倉蓮(東海大相模)主将

 東海大相模の猛攻はまだ止まらない9回表、杉崎 成輝が一死二、三塁から追加点となる3ラン本塁打を放った。

 だが中京大中京も粘り、9回裏、二死一塁から8番内藤 諒一(2年)が左中間を破る適時二塁打で1点を追い上げる。これで内藤は2本目の長打。左打席から広角に長打を打てる選手。インパクトまで最短距離で捉え、さらにヘッドをうまく効かせてはじき返すことができる選手。中京大中京は2年生左腕の長谷部 銀次を含め、遊撃手の佐藤など中々頼もしい選手が揃っている。

 さらに上野の右前適時打が飛び出し、7対5へ。だが反撃はここまで。東海大相模の吉田が抑え、国体初優勝を決めた。選手権優勝に続き、二冠を達成した。

 東海大相模にとってこの大会、野球部としての集大成を発揮する大会であった。今回のベンチ入りは全員が3年生。なかなか試合に出られなかった選手もベンチ入りしている。そういう選手たちのためにも長く試合をしたい思いでいっぱいだった。  昨秋、神奈川準決勝の平塚学園に敗れ、選抜を逃した。そこから「粘り強いチームになりたい」という思いでスタートした東海大相模。選手権後は各自に調整を任せながら、準備をしてきたが、4試合すべて二桁安打と圧倒的な打撃を見せた。 そして中京大中京も粘りの攻撃。長倉も「試合前の気合いが凄かったです」と緊張感のある真剣勝負であった。 だが試合が終わると選手たちは笑顔を見せながら交流。U-18ワールドカップに出場した小笠原 慎之介、杉崎、豊田、上野、伊藤 寛士の5人が仲良くしている姿を見ると、チームを超えて同世代の選手たちが交流しあうことはとても良い光景である。 例年、他校同士の交流が多い国体だが、これほど試合後に両校が笑顔を交わしながら話し合う姿はなかなかないこと。その姿を見ていると我々も微笑ましい気分にさせる。 そういう光景は決勝戦だけではなく非常に大きかった。 国体に出場した選手たちは大きなつながりが生まれた。それは後年になって大きく生かされることだろう。

(文=河嶋 宗一)

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