投手戦、田中に軍配・鹿屋工

田中 秀幸(鹿屋工)

 鹿屋工・田中 秀幸(2年)、奄美・大野 颯(2年)。両エースの好投で終盤まで1点を争う緊迫した展開だった。

 鹿屋工は初回、エラーを皮切りに一死一三塁とチャンスを作り、4番・福園 大煕(2年)のレフト前タイムリーで幸先よく先制する。序盤で一気に鹿屋工が畳み掛けるかと思われたが、大野が踏ん張って追加点を許さなかった。

 田中は低めの変化球の制球が安定しており、奄美打線にジャストミートをさせなかった。5回までは3人ずつのパーフェクト投球。6回に先頭打者をエラーで出し、連続四死球で満塁のピンチを背負ったが、得点を許さなかった。

 2回以降、好機をものにできなかった鹿屋工打線は9回、二死二三塁とすると、3番・川畑 翔平(2年)が低めの変化球をうまくすくってセンター前に運び、待望の追加点を加えた。終わってみれば、田中は1安打完封勝利だった。

 あわやノーヒットノーラン、わずか1安打の完封負けだったが、奄美・下野 政幸監督は「ベンチの中では負けている意識、雰囲気は全くなかった」という。ただ「好投している大野を助けたい」(下野監督)想いだけでチームは一丸となって戦っていた。

 立ち上がり、いきなりエラーが出て失点する。先発したエース大野は8月の地区大会後から右肩痛があり、大会直前に体調を崩したことで「練習ができていなくて不安だった」。それに拍車をかけるように、ミスからの失点で気持ちが崩れてもおかしくない場面だったが「捕手の中原が強い気持ちでミットを構えてくれたので、思い切り投げられた」

 自分のやるべきことは、仲間を信じて、中原 勇将(1年)のミットをめがけて投げるのみ。その後も再三得点圏に走者を背負う場面がたびたびあったが、追加点を許さなかった。

 8回二死満塁のピンチも、ベンチから伝令が出て野手が集まり、気持ちを一つにしてしのぐことができた。下野監督は「元々パワー系の投球をするタイプだったけど、故障して練習ができなかった分、力が抜けて良い投球ができていた」と振り返った。

 守備では何度かエラーもあったが、引きずることなく切り替えて、淡々と守り切ることができた。打線が打てなかったのは、低めの変化球を見極めきれずに対応できなかったからだ。この試合で見えた課題は「本物の野球の力をつけること」(下野監督)。冬場やるべきことは明確になった。

(文=政 純一郎)

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