アメリカでは民間企業による宇宙ロケット開発が活発さを増しており、イーロン・マスク氏の「SpaceX」によるロケット実験などがよく知られているところです。そんな中、同様にロケット開発を進めているAmazonのジェフ・ベゾス氏が設立したBlue Origin社による実験用ロケット「New Shepard」の打ち上げ実験が行われ、大成功に終わった様子が発表されています。

Blue Origin | First Developmental Test Flight of New Shepard

https://www.blueorigin.com/news/blog/first-developmental-test-flight-of-new-shepard

今回の試験飛行で打ち上げられたNew Shepardは、液体水素と液体酸素を燃料として最大推力11万lbf(490kN)を持つロケットエンジン「BE-3」を搭載しており、到達高度30万7000フィート(約9万3574メートル)、最高速度マッハ3を達成し、ほぼ全ての項目で完璧に作動したことが確認されています。New Shepardが実際に打ち上げられ、空中での切り離しを経て地上に帰還する一連の様子は、以下のムービーでまとめられています。

First Flight - YouTube

テスト飛行が行われたのは2015年4月29日。アメリカ・テキサス州にある打ち上げ施設で実施されました。



トレーラーで運ばれるNew Shepard。意外に小型なロケットです。



ロケット後部に見える噴射口。New Shepardは液体水素と液体酸素を燃料として最大推力11万lbfを誇るBE-3エンジンを搭載しています。



機体がゆっくりと起き上がり、発射台にセットされます。



着々と進められる準備。



気象観測用のバルーンを飛ばして上空の様子もチェック。



そしてカウントダウンののち、ついに発射の瞬間。エンジンに火が入りました。



発射台から切り離されるNew Shepard。



炎を吹き出しながら高度を上げるNew Shepard。大規模ロケットのような大量の煙(水蒸気)が出ていないのは、発射台から保護用の水を噴射していないため。



ぐんぐん高度を上げるNew Shepard。最終的に高度30万7000フィート(約9万3574メートル)、速度マッハ3に到達しました。



予定どおり、上空で推進モジュールの切り離しにも成功。切り離されたモジュールは地上に戻って再利用される予定でしたが、油圧系統のトラブルが原因で回収に失敗。今回の一連のテスト飛行において、唯一失敗に終わった部分だとのこと。



推進モジュールから切り離され、単体で落下するNew ShepardのCC(Crew Cupsule:乗組員カプセル)。



帰還用の巨大なパラシュートが開き、毎秒24フィート(約7.3メートル)の降下率で地上を目指します。



土煙を上げて着陸したCC。推進モジュールの回収には失敗しましたが、予定されていた項目を全てクリアしてテスト飛行は大成功におわりました。



このムービーはドキュメンタリー風に仕立て上げられていましたが、10秒カウントダウンから帰還の一連の流れをほぼ全編にわたって収録したムービーも公開されており、関心のある人には興味深い内容になっています。

307,000 Feet - YouTube

上記のムービーに加え、数枚の高画質画像を公開するページも用意されています。

Blue Origin | Images and Videos From Our First Flight

https://www.blueorigin.com/news/multimedia/images-and-videos-from-our-first-flight

なお、Blue Originでは今回に続く実験を今後も実施予定とのこと。特に、大型化が容易なVTVL(Vertical Take-off, Vertical Landing:垂直離着陸)に特化した実験が予定されており、推力55万lbf(2400kN)を誇るBE-4エンジンを搭載し、New Shepardの数倍の規模を持つ兄弟機の設計が進められているそうです。

Amazonで大成功を収めたベゾス氏は宇宙開発関連に関心を寄せていることでも知られています。2013年には、NASAのアポロ計画で活躍したサターンV型ロケットに搭載され、打ち上げ後に深海に沈んでいたF-1ロケットエンジンを、私財を投じて引き上げたことも記憶に新しいところです。

アポロ計画で使用されたエンジンをAmazonのCEOが深海からサルベージ - GIGAZINE