独機墜落、パイロット「メンタルに問題」 JAL機羽田「逆噴射」事件が連想される
ドイツの格安航空会社(LCC)、ジャーマンウィングスの旅客機(乗員乗客150人)の墜落事故は、ドイツ国籍のアンドレアス・ルビッツ副操縦士(27)が故意に高度を下げる操作をした末に起こっていた可能性が高くなった。
ボイスレコーダーに記録された内容からすると、ルビッツ氏が機長をコックピットから締め出し、その間に墜落につながる操作をしていたようだ。中年以上の日本人ならすぐに連想しそうなのが、1982年に日本航空(JAL)機長が羽田沖で起こした「逆噴射」事件。早くも、ルビッツ副操縦士がかつてメンタルヘルスに問題を抱えていたという報道も出ており、事件との関連の解明が待たれる。
14年秋の「古巣」飛行クラブ訪問では誰も異変に気付かず
フランスの検察当局が2015年3月26日の会見で、ボイスレコーダーを分析した結果として明らかにしたところによると、機長がトイレに行くためにコックピットを退出し、その後コックピットに戻ろうとしてもドアが開かなかった。機長は「締め出された」形になり、コックピットのドアをこじ開けようとする音が残っていた。墜落直前までルビッツ氏が呼吸する音も収録されており、ルビッツ氏に体調の異変はなかったとみられている。
ドイツの検察当局は3月27日にルビッツ氏の自宅を捜索。今後の焦点はルビッツ氏が「奇行」に至るまでの動機の解明に移ったと言ってもよさそうだ。
英テレグラフ紙などによると、ルビッツ氏は14歳ごろから地元の飛行クラブに所属し、パイロットを志した。同氏は14年秋、免許の更新のためにクラブを訪れ、ガールフレンドとともにバーベキューを楽しんでいる。クラブの会長はその時の様子を「エアバス機のような旅客機の免許を取れて非常に嬉しそうだったし、誇りにしていた」と振り返っており、この時、ルビッツ氏について異変を感じた人はいなかったという。
現時点で事故との関連は不明ながらも、ルビッツがメンタルヘルスに問題を抱えていたとの指摘も出始めている。
ルビッツ氏は、ジャーマンウィングスの親会社にあたるルフトハンザ航空で08年からパイロットとしての訓練を受け始めた。フランクフルトの大衆紙、フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥングによると、訓練施設の同級生の母親がルビッツ氏について、
「『燃え尽き症候群』で、うつ病のようだった」
などと話している。ルビッツ氏は、施設での訓練を数か月にわたって中断していたことが明らかになっている。独ビルト紙はこの中断の前にルビッツ氏が「大うつ病エピソード」と呼ばれる状態だったと診断されていた、と報じている。
ルフトハンザのカールステン・シュポア最高経営責任者(CEO)は、3月26日の会見で、中断の理由については明らかにしなかったが、ルビッツ氏については「100%基準を満たしていた」などと説明している。
国内航空会社では身体検査でメンタル面も把握
では、日本での状況はどうか。乗員のメンタルヘルスが事故につながったケースとして有名なのが、1982年のJAL350便の事故だ。羽田空港に着陸しようとしていたDC-8型機で、機長が突然エンジンを逆噴射する操作を行ったため、機体は前のめりになって墜落。乗客・乗員24名が死亡した。機長は業務上過失致死罪で逮捕されたが、精神鑑定で妄想性精神分裂病(統合失調症)と診断され、起訴は見送られた。
日本航空(JAL)では、年に2回にわたって行われる航空身体検査や定期健康診断で、医師の問診を通じてメンタルヘルスについてもチェックしていると説明する。これに加えて、週に3回は資格を持つカウンセラーをオフィスに配置し、メンタル面の相談ができる体制を整えているとしている。
全日空(ANA)も同様で、航空法で定められた身体検査の際にメンタル面も把握できるようにしていると説明している。
今回のジャーマンウィングス機のように、パイロットが締め出された際の対応については、
「保安については開示できない」(JAL)
「(パイロットが)締め出されるといったケースは想定していないが、パイロットがトイレのためにコックピットを出た際は、しかるべきコミュニケーションを取って、中に入れる状態になっている」(ANA)
と回答した。