麻酔なしで、お腹を痛めて出産するのが一般的な日本では、ちょっと考えられないような現象がフランスで起きている。それは「帝王切開ブーム」だ。

フランスでは近年、帝王切開をする女性が増え続け、現在の数は1980年に比べると2倍、1972年と比べると3倍になっているという。

    帝王切開をしなければいけない状態ではないのに頼むことが多い

『Inserm』という専門機関の研究者であるベネディクト氏は、2010年から1,500人の妊婦を対象に調査をしたところ、「帝王切開を実施した妊婦の30%は、帝王切開をさけるべきだった」という結果を導きだした。

そもそも、帝王切開を実施する例というのは、初めての出産が30歳以降であること、人工授精での妊娠、または双子を妊娠している状態や、極度の肥満状態での妊娠等である場合が考えられる。

ところが、妊婦の中には「帝王切開が楽だから」という理由で、帝王切開をしなければいけない状態ではないのに、頼むことが多いというのだ。

帝王切開を希望する妊婦の理由は具体的に「出産が怖い」、「出産予定日を決められる」などがあるという。

    物理的なメリットはある

実際にどれだけの女性がこういった理由で帝王切開を選択する女性がいるのかは、はっきりと分かっていない。ただ、病院側も出産日をコントロールできることは都合がよく、さらに妊婦にとっても帝王切開の方が国民保険の給付率も高いので物理的なメリットが目立ってしまうのだろう。

フランス医療機関が作成したパンフレットには「帝王切開は、問題がある場合に適応される手術です」と注意書きされている。このパンフレットだけで、妊婦たち間での帝王切開ブームが果たして廃れるかどうかは謎だ。

ただし、海外では「占いなどで子供の誕生日を決める」ために、帝王切開が主流という国もあるという。出産という原始的な現象には、その土地の文化が反映されやすい面もあるといえよう。

いずれにせよ、安全な状態で出産をできることを第一に考え、自分に一番あった出産方法を専門家と話し合って決めることが大事だろう。

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(中村綾花)