「低俗バラエティー」批判に「笑い」でお返事? NHKのオムニバスコント番組に反響
2014年5月8日に放送されたNHKのオムニバスコント番組「LIFE!」で、国会議員からの「低俗バラエティー」批判を笑いに変えたコントが放送され、インターネット上で反響を呼んでいる。
タイトルは「NHKなんで」。ウッチャンナンチャンの内村光良さん扮するNHKの古株ディレクター・三津谷寛治が「NHKなんで」と言いながら出演者に硬派すぎる演出を押し付けるというコントで、その要求の数々は議員の主張を思わせるものばかりだった。
「ドタバタしすぎ」「頭叩くな」
コントは「おもしろジャパンにロックオン」と題した新バラエティー番組の収録リハーサルという設定で、ココリコの田中直樹さんを司会役に、オードリーの若林正恭さん、春日俊彰さん、アンタッチャブルの山崎弘也さんら人気お笑い芸人が本人役で出演した。田中さんは「NHKだけどバラエティーだからいつも通りやってくれたらいいから!」と芸人たちにはっぱをかけるが、急きょ番組の演出を務めることとなった三津谷ディレクターがスタジオにやってくると、その空気は一変する。
三津谷ディレクターはさっそく田中さんを呼び出し、「非常に低俗な雰囲気、これはまずいですね。NHKなんで」と始めると、出演者陣に対し、
「出演者全員のテンションが無駄に高く、ドタバタしすぎです」
「いくら怒ったからといって人の頭を叩くのは止めていただきたい」
「ギャグはNHKにはいりません。民放でやってください」
などと、次々に注文をつけていった。
これらの注文は、件の「低俗バラエティー」批判を彷彿させる。2014年3月、日本維新の会の中田宏衆議院議員は、衆院総務委員会の中で「NHKの番組が、一言でいうと低俗になっていないか」「あまりにも民放のまねをしすぎではないか」と疑問を投げかけた上で、
「ドタバタ暴れて人の頭を叩いて笑いを取るようなものではなく、地域性や日本の歴史や文化をひもとき、若い人が関心を持てるような番組にしてほしい」
と訴えていた。
三津谷「うーん、全然面白くありませんね」
コントでは、数々の「演出」が加えられた結果、番組は全く異なるものに仕上がった。番組のタイトルは「ジャパン 〜地域とその歴史を訪ねて〜」に変更。日本全国の面白い人たちを紹介するという当初の内容は、日本の各地域に根差した、素晴らしい人物とその歴史をひもとく内容となり、「低俗さ」のかけらもなくなったのだ。この出来栄えを三津谷ディレクターは「うーん、全然面白くありませんね。ま、いいでしょう。NHKなんで」と評し、コントは終了する。
その後のスタジオトークではコント内容に触れられることはなく、実際に批判に対するアンサーコントとして作られたかどうかは定かではない。だが、インターネット上では批判と関連付け、
「低俗バラエティーへの批判を笑いで見事にやり返してた。カッコいいなホント。批判を受け入れてどんどん笑いを矮小化していって、結果ゼロにしたらどうなるのか。その怖さをお笑いで体現。そんな笑いの強さったらない」
「実際に笑いがなくなった番組というコントで笑いを誘うなんて。あからさまな反論ではなく、あえてそれを取り上げることであの発言の滑稽さを提示する感じ。笑いの強さを思い知らされた」
などと絶賛する視聴者からの声が多くあがっていた。
なお、「NHKなんで」が放送されたのは今回が2回目で、第1回は昨年12月26日に放送された。嵐の大野智さんが紅白歌合戦PRスポットの撮影に臨むという設定で、三津谷ディレクターは大野さんにシャツの裾をしまうことや七三分けを要求したほか、紹介コメントの単語、単語に「お」をつけるようお願いするなど、必要以上の演出を求め、笑いを誘っていた。