韓国南西部・珍島(チンド)沖で発生した旅客船「セウォル号」沈没事故で、当時救助活動を行うため緊急出動したヘリコプターが、全羅南道の知事らを乗せるために「寄り道」し、事故現場への到着が遅れていたことが分かった。複数の韓国メディアが報じた。

 全羅南道消防本部に所属するヘリコプター2号機は、事故が起きた4月16日の午前9時40分ごろ、緊急出動の要請を受け、珍島郡沖の事故現場に向かった。ヘリコプターには操縦士2人、整備士1人、救助隊員2人の計5人が乗っていた。

 しかし、救助ヘリは離陸から15分後、消防本部から「全羅南道庁に寄り、キム・ヨンソン全羅南道行政副知事とパク・チョンウン全羅南道消防本部長を乗せて行くように」との指示を受け、全羅南道庁に引き返す形に。2人を乗せて再び離陸し、珍島郡彭木港に到着したのは予定より20分遅い午前10時37分だった。この時、セウォル号はすでに沈没していた。

 また別のヘリコプターも同日午前10時40分ごろ、現場に向かう途中で「パク・ジュンヨン全羅南道知事が乗らないといけない。道庁に寄れ」との指示を受けたため、道庁に寄り、知事を乗せた。現場に到着したのは午前11時30分ごろで、やはり予定より20分遅れていた。

 犠牲者の家族らは、救助ヘリが全羅南道庁に寄らなければ、セウォル号から乗客を1人でも救助できた可能性があるとして、知事らの救助ヘリ利用を厳しく批判した。

 全羅南道消防本部の関係者は「救助活動の責任者である道知事や公務員は、緊急な場合は消防ヘリを利用することができる」としながらも、「直ちにヘリコプターが事故海域に行っていたら、迅速な救助ができただろう」と述べた。(編集担当:新川悠)