いよいよ年末商戦スタート! だが、家電量販店の売り方が、まるでテレビ通販のように抱き合わせが増えている

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今、日本の家電業界で史上空前の“抱き合わせ販売ブーム”が起きている。これはジャパネットたかたに代表されるテレビ通販でお馴染みの手法だが、いまや大手家電量販店にまで広がっているのだ。

激安家電ハンターの、じつはた☆くんだ氏は、その実態をこう語る。

「家電量販の実店舗でいえば、抱き合わせの“フロントランナー”はケータイやブロードバンドなどの通信事業社。『ブロードバンドとセットの0円パソコン』や、『他社からの乗り換えで0円ケータイ端末』はおなじみですよね。最近ではiPadやPS3、Wiiとの抱き合わせはもちろん、通信とは関係のない空気清浄機や掃除機、旅行券や商品券、あるいはそのものズバリの“キャッシュバック”とのセットも珍しくありません」

通信事業社のこの成功が、販売不振に苦しむ量販店と家電メーカーの背中を押したようだ。家電業界に詳しい大手証券会社アナリストのA部長が解説する。

「今の量販店で、何もせずに客が集まるのはスマホ売り場くらいのものです。テレビ売り場なら、ケーブルテレビ契約やブロードバンド契約との抱き合わせで在庫のテレビやBD(ブルーレイディスク)レコーダーを売るといった具合に、相当なおトク感を出さないと売れない時代になってしまいました。もちろんこうした取り組みは、なんとか在庫を処分・換金したい家電メーカー側としても大歓迎なわけですが、それにしても店頭での値引き幅はすさまじいものがあります。自宅の回線すべてを契約すれば、テレビやBDレコーダーが最高5万円近くも値引きされるわけですから」

しかし、抱き合わせの傾向がさらに顕著なのは、もっと崖っぷちの販売不振に苦しむゲーム機だ。A部長が続ける。

「ケータイでプレイするゲームに人気を取られ、携帯型ゲーム機はジリ貧の一途。家庭用ゲーム機も、2007年をピークに復調の兆しが見られません。11月に赤字覚悟の価格でアメリカで先行発売され、1週間で40万台を売った任天堂の期待のWii Uも、業界全体の状況を変えるほどの売り上げは望めないでしょう。今、現実的にゲーム機の売り上げを支えているのは、人気ソフトとゲーム機のセットパック。典型的な成功例が『ドラゴンクエスト10 Wii本体パック』です。今年8月にメーカー希望価格2万5000円で発売されたんですが、ドラクエ人気にあやかって、今では3万5000円以上で販売されています」

半年で半値まで下落する製品もザラな昨今では、異例の人気。もちろんドラクエだけでなく、最近は多くの人気ソフトがパック販売のネタになっている。

ならば、今年の年末商戦では、どんな抱き合わせ商品が登場するのだろうか? 40年以上、家電業界の栄枯盛衰を見守り続けてきた大阪・日本橋のバッタ屋O専務が予想する。

「今年の年末年始の旬は、空気清浄機とコタツやな。今、ウチの倉庫は、メーカーや販売店から買い取った清浄機とコタツの在庫でいっぱいやで(苦笑)。もう歳末向け目玉商品の問い合わせが来とるからなぁ。年末にはテレビやパソコンと、空気清浄機やコタツの抱き合わせ販売があちこちで始まるハズやで」

販売店からすれば、現金1万円の値引きよりも販売価格1万2000円の商品をつけるほうが利益が残りやすい。メーカーも、とにかく大量にある在庫を手っ取り早く現金化できる。欲しい商品の組み合わせなら、もちろん消費者にとってもメリットがある。うまくいけば、3者が喜ぶのが?抱き合わせ?の魅力なのだ。

現在、テレビ&レコーダーの地デジ乗り換え需要も完全に終わってしまったことで、家電量販店の市場規模は2010年からわずか2年で約20%も縮小した。年末商戦に向け家電業界が展開する抱き合わせ販売は、この苦境を少しでも救うことができるだろうか。

(取材・文・撮影/近兼拓史)

■週刊プレイボーイ51号「崖っぷち抱き合わせ商法を狙え!」より