すべてのメッセージ内容を確認しているわけではないという

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交流サイト(SNS)「mixi」の利用者が、旧友とのメッセージのやり取りが原因でアカウントが停止になったと明かした。「今度みんなで遊ぼう」と書いた内容が、運営事務局から「規約違反」と判断されたと主張する。

メールなどの内容を利用者の許可なく読めば「通信の秘密」侵害の恐れがある。運営側はどのようにしてメッセージの中身を知り得たのか。

「メッセージ内容を確認する場合があります」が同意事項

「国内SNS怖いわ」。ツイッターで、ひとりの利用者がこうつぶやいたのは2012年11月11日。mixi上で、何年も音信がなかった古い友人から突然メッセージが届き、「久しぶり」「今度みんなで集まるから、遊ぼう」と旧交を温め合ったところ、mixiの運営事務局から警告が届いたという。「異性と直接出会おうとする行為は規約違反」というものだ。

mixiの利用規約を見ると、第14条に「禁止事項」が細かく定められており、違反した場合は強制退会や利用停止、情報の一部削除といった措置がとられる。そのひとつが「面識のない異性との出会い等を目的として利用する行為」の禁止だ。どうも、この項目に抵触した可能性がある。

それにしても、2者間で交換したメッセージの内容を運営側はどのようにして把握したのか、との疑問が生じる。アカウントを凍結されたこの利用者は「mixiはユーザーのメッセージを監視している」という趣旨をツイッターに書き込んだが、本当だろうか。

総務省の「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」が2010年5月に発表した第2次提言を見ると、SNSサイト内でやり取りされるメッセージの内容は「通信の秘密」に該当するという。勝手に内容を確認すれば「通信の秘密は、これを侵してはならない」と定める憲法21条に反する。その一方で運営者が、メッセージの内容を確認することについて利用者からの同意がある場合には認めるとした。青少年保護のための「特別な対策」というわけだ。

ではmixiは「利用者の同意」を取り付けているのか。メッセージの本文を書いて送信しようとすると、「同意事項に同意して、送信してください」という画面が表示される。「必読」と記されたその中身を見ると、最初に、

「株式会社ミクシィは、メッセージの内容を確認する場合があります」

と書かれていた。さらに、内容が利用規約などに違反したと判断した際にはメッセージの削除、さらには強制退会といった処分を行うと明示してある。最後に、ユーザーの同意を得たうえで、「主として、面識のない異性間の出会いを目的とする行為等からユーザーを保護するために必要な範囲内でメッセージ内容の確認を実施いたします」と念を押していた。これに同意しなければメッセージを送れない仕組みなのだ。

アカウント停止は「複数回の警告でも改善みられない場合」

「同意事項」に同意してメッセージを送った以上、仮に規約に違反した文面と判断されたら利用者としては削除されても文句は言えないだろう。

運営会社のミクシィ広報に取材すると、「すべてのメッセージを確認しているわけではありません」と明かしたうえで、「面識のない異性との出会い等を目的として利用する行為」についての確認だと話す。そのために利用者同士の関係性や、友人になっているかどうか、年齢といった点を踏まえて、違反の可能性があるメッセージをシステムで自動的に抽出するという。

さらにアカウント停止や削除は、「基本的に複数回の警告を行い、それでも改善がみられない場合」にとられる措置のようだ。今回ツイッターに書き込んだ利用者のケースは不明だが、ミクシィの説明によれば、例えばメッセージでうっかり異性の友人相手に連絡先を問い合わせたり、食事に誘ったりしても「1発退場」とはならないことになる。

確かに援助交際のような悪用を防ぐには有効な手段に思える。一方で、同意したとはいえ「メッセージ本文が見られている」となれば心地いいとは言えず、友人とのやり取りを控えようという気になりはしないか。ITジャーナリストの井上トシユキ氏はJ-CASTニュースの取材に、「内容確認は仕方ない面はあります」と話す。若年層に利用者を増やすには、性犯罪をはじめとした異性間のトラブル防止策は運営側にとって必須だからだ。

半面、規制を強化すれば利便性が低下する恐れがある。純粋に友人に会いたいと送ったメールに「イエローカード」を出されては、「mixiは面倒。ほかのSNSにしよう」と利用者離れが起きないとも限らない。

(11月13日12時40分追記)ミクシィ広報は利用者に対して、利用規定に違反していないにもかかわらずメッセージや投稿が削除された場合は「問い合わせフォーム」から連絡してほしい、とコメントしている。