東京電力福島第一原発の事故の環境への影響を調べている日本、米国、デンマーク合同の研究チームが、調査結果を発表した。それによると、大量の放射能が放出されて間もない3月から7月の野鳥の繁殖期間に、すでに放射能の深刻な影響が出始めていることが明らかになった。

 研究チームには日本から立教、長崎、福島大学、米国からサウスカロライナ大学、他にパリ第11大学などが加わった。

 研究チームは放射能汚染の程度のデータをもとに福島県内の300に及ぶ地点で鳥の種類と個体数を調査。

 放射線量の最も高い地点は毎時35マイクロシーベルト、最も低い所で毎時0・5マイクロシーベルトだった。それぞれの調査地点の鳥の個体数と種類は研究者らの目視と鳥の鳴き声によって判別されたという。

 データは最新の数学的手法と統計学を用いて解析され、線量が異なる地域間で鳥の個体数がどう異なるかを調査。その結果、鳥の個体数は放射線量が高い所ほど少なくなっていることが明らかになった。

 福島、チェルノブイリの両地域に共通する14種類の鳥類で比較して、福島の事故のほうが影響は深刻だったという。

 一報を報じたイギリスのインディペンデント紙は、

「チェルノブイリ原発事故と比べて、福島のほうが野鳥の生息数への影響が大きく、寿命が短くなり、オスの生殖能力が低下していることが確認された」

 チェルノブイリでは、多くの動物種のDNA欠落の割合が急上昇して奇形や絶滅が生じ、加えて、昆虫が激しく減少したという。野鳥に関しては福島のほうが深刻だという今回の調査結果には、背筋が寒くなる思いだ。

 調査チームに加わった立教大学の上田恵介教授が語る。

「急性被曝ではなく低線量被曝なので、野鳥への影響はこれからジワーッと出てくると思います。野鳥は自然界の食物連鎖の頂点に位置しています。鳥が自然界のものを使って巣を作り、昆虫など餌を捕食した結果、どのように生物濃縮が行われていくか調べたい。調査はまだ緒に就いたばかりなので、今後どんな影響が出てくるかはわからない。とにかく調査を積み重ねることが大切です」

 実は山階鳥類研究所でも福島第一原発から放出された放射能の影響を調べるため、昨年できた日本各地のツバメの巣を収集している。ツバメは放射能が集まりやすい水たまりの泥で巣を作るため、ヒナに甚大な影響が出るとされている。

「チェルノブイリ事故ではツバメの白血球の減少や脳の容積の縮小も確認され、論文に発表されています」(山階鳥類研究所の研究員)

 鳥や虫が住めない土地に人が住めるのだろうか。原発事故は計り知れない災厄をもたらしている。