ドキュメントAVのカリスマ、平野勝之が監督した『監督失格』が全国ロードショーに。奇才は今、何を考えているのか?

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 キミは林由美香を知っているだろうか? 6年前に亡くなった往年のトップAV女優で、全盛時は知らぬ者がいないほどの売れっコだった。今、生きていれば41歳だから、世代的に週プレ読者には知らない人も多いだろう。

 その故・林由美香(以下、『故』は省略します)が26歳だった頃に付き合っていたAV監督が今回の主役、平野勝之氏である。彼が林由美香と付き合っていた当時から別れた後、そして衝撃的な死に至るまでのドキュメントを映画にした『監督失格』(公開中)がスゴいことになっている。当初は単館上映から始まったが、あまりに壮絶な内容が話題になり、瞬(またた)く間に全国公開となった。

 AV監督が撮った映画が全国ロードショーとなるのは史上初の快挙。AV業界では昔から“狂気の人”として有名だったから話題騒然だが、一般的に広くは知られていない人物なので、思い切って紹介することにした。彼の代表作をふたつ挙げよう。まさに狂気の沙汰だ。「思い切って」と言うワケがわかるだろう。

●『アンチSEXフレンド募集ビデオ』(94年)
静岡に住む平野の両親に「婚約者に会わせる」と言ってAV女優を連れていき、「実はセックスフレンドだ」と告白し、親の反応を撮影した作品。

●『わくわく不倫講座』(95年)
上記の作品でセックスフレンド役だった女優を後に好きになってしまい、なんと実の奥さん(一般OL)とのガチの結婚式会場に女優を呼び、式の当日にセックス。結婚初日から不倫して、最終的には奥さんとのエッチも公開してしまう、考えられない作品。

 この前後にも衝撃作を数多く製作。とっても興味あるけど、こんな恐ろしい人とまともな話ができるワケがないよ……。てことで、ふたりの助っ人にご登場願うことにした。

 ひとり目は、主にAV系の仕事が多いライターの雨宮まみ氏。彼女はなんと、学生時代に初めて観たAVが平野作品という奇特な女性。個人的にも親交が深いとの情報を聞き、招集決定♪

 ふたり目はAVメーカー「プレステージ」の看板監督、マンハッタン木村氏。彼は演出にドキュメンタリー性やハプニング性を入れ込むことを好むが、ユーザーからは「ヌケないAV」と評価される時期を長く過ごした。今は“大人”になってヒット作を出している。平野監督を尊敬しているとのことで、ゴキゲンとりとして招集! さあ、お待たせいたしました。奇才、平野監督の登場でぇ〜す!

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【週プレ(以下、プ)】僕はコワイんで、まずは木村さん、悩み相談とかしてみてくださいよ!

【マンハッタン木村監督(以下、キム)】平野さんの作品って、AVとして売れるかどうかを一切考えていないように見えるんですが?

【平野監督(以下、平野)】昔はレンタルだったからムチャな遊びができたんだよね。インパクトやタイトルありきのパッケージ勝負だった。プロデューサーは誰も中身を見ないし、遊べたんだよね。

【プ】レンタルはショップが全タイトルを選ばずに仕入れるから、作品ごとの人気がバレないのか!

【キム】今は作品ごとに売り上げデータが一円単位で出ちゃうから、売れない作品を作ると怒られるんですよ……。

【雨宮まみ(以下、雨)】今はインターネットでも好き放題なレビューを書かれますもんね。

【キム】ちょっと遊び心のある作品を出すと、すぐに“2ちゃん”とかでボコボコにたたかれる……。

【平野】そーゆー鬱憤(うっぷん)をため込んでさ、エネルギーを爆発させりゃいいんだよ、自主映画でもなんでも! だいたい、AVじゃなきゃダメなのか?

【キム】女のコは撮りたいんですよ。エロも好きだし。だからAVではいたいんです。