「5万元、6万元、8万元、10万元…」このような一連の数字が示すものは、近頃、中国のレアアース貿易において、起きている価格の高騰である。今までは最低で数百元で取引できたが、今年の中国のレアアースはとりわけ貴重で、相場は今までの数倍に高騰していた。売りたくとも、売ることができない「有価無市」の状態が多くの人を悩ませている。中国網日本語版(チャイナネット)が報じた。

 「価格が安すぎるからではなく、国が割当てた量があまりにも少ないため、もったいなくて売ることができない」のだと多くの業界関係者は言う。いつもなら、取引市場は非常に盛り上がっているのだが、今年は静かだ。輸出割当をたった1トン手に入れることさえ、今は困難な状況にある。

 レアアース輸出割当量の削減という国の強烈な一撃により、中国国内の輸出企業は前代未聞の割当不足に直面している。商務部が発表した割当量の統計データによると、2010年のレアアースの割当量は09年の水準を40%下回り、これは、中国輸出史上いまだかつてないことである。

 それと同時に、現行の割当量が理にかなっているのか、科学的な判断に基づいているのかについての論争がますます激化している。近年のレアアースの大量輸出を招いた元凶は、中国がこれまで長年実施してきた割当制度にあるのだという見方もある。

 割当量と注文・生産能力がアンバランス

 数日前、記者が買主を偽って国内の何件かのレアアースを保有している製造業者に連絡を取ってみたところ、申し合わせたように同じ答えが返ってきた。10万元(約130万円)という法外な価格を付けてくるのは、実はただの口実で、もったいないので売りたくないというのが皆の本音であるようだ。

 「国が明確に禁止している事だが、ここ数年の割当の売買は、もはやレアアース業界の公然の秘密となっている。」自分たちの会社がたとえ輸出の資格を持っていなくとも、毎年必ずある程度の海外からの受注を手に入れる事はできる。受注があれば、割当を買い、資格のある企業と手を組み、どうにかこうにかして輸出する。また、資格を持っている企業同士での、割当の売買に至っては日常茶飯事のことである。

 割当制度の制限や偏りは、多くのレアアース生産企業が割当をもらえないという事態を招いている。一方、一部の非生産型の貿易企業は、さまざまなルートを利用して割当を手に入れている。このような事態は、実際の割当と注文、生産能力との不調和を生むことになる。「生産をしていない、あるいは注文が少ない貿易企業の割当量が多ければ、企業に生産品を買って輸出する。あるいは直接、割当をほかの企業に売る」このようなことは暗黙の了解であるのだと、包頭市のある大型レアアース企業の社員が匿名で教えてくれた。(編集担当:米原裕子)



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