■ 第16節

首位の鹿島アントラーズとは勝ち点差「2」で3位の名古屋グランパスが横浜Fマリノスと対戦。ホームの横浜FMは6勝5敗4分け。アウェーの名古屋は9勝4敗2分け。名古屋は中断明けの3試合で2勝1分けと好調。

横浜FMは<4-4-2>。GK飯倉。DF天野、栗原、中澤、金井。MF小椋、清水、中村俊、兵藤。FW坂田、山瀬功。ダイヤモンド型の中盤でFW渡邉千がスタメン落ち。17歳のFW小野もベンチスタート。

対する名古屋は<4-1-2-3>。GK楢崎。DF田中隼、増川、闘莉王、阿部。MFダニルソン、中村直、マギヌン。FW金崎、ケネディ、玉田。MFブルザノビッチ、MF小川、MF三都主らがベンチスタート。

■ 名古屋が勝利

試合は名古屋がボールを支配して、横浜FMがカウンターで攻める展開。

横浜FMは2トップのFW坂田とFW山瀬功が積極的にDFラインの裏に飛び出してチャンスを作る。どちらかというと横浜FMペースで試合は進んでいたが、前半37分に自陣で横浜FMのMF清水がバックパスのミス。これを拾ったFWケネディがミドルシュートを放つと、相手DFに当たって少しコースが変わってゴールイン。名古屋が先制する。FWケネディは得点ランキングトップの10ゴール目。前半は名古屋が1対0とリードして終了する。

後半になると1点リードを奪った名古屋がペースを握って試合を優位に進めていく。追加点は後半23分。MFダニルソンが中央でボールを持つと得意の左足でグラウンダーのミドルシュートを決める。これで2対0と点差を広げる。横浜FMはFW小野、FW渡邉千を途中から投入するも、後半は動きがガクッと落ちて反撃できず。

結局、そのまま2対0で名古屋が勝利。鹿島が勝利したため首位浮上はならず3位のままだったが、勝ち点を「32」まで伸ばした。一方の横浜FMはホームで完封負けとなった。

■ 調子が上がってきたダニルソン

名古屋はこれで中断明けの4試合で3勝1分け。順調に勝利を重ねていて、2位と好位置につけている。今後、FC東京、浦和、川崎F、G大阪と力のあるチームとの対戦が続いていくが、いい状態で試合に入ることが出来るだろう。

名古屋は、今シーズンから基本フォーメーションを<4-1-2-3>に変更しているが、ここに来てこのシステムが機能し始めていて、スタメンも固まってきた。大きいのはアンカーのMFダニルソンがフィットしてきたこと。シーズン序盤はアンカーを任せるには「判断力」と「守備力」と「経験」と「ビルドアップ能力」が不足していて非常に厳しかったが、チームに慣れてきたのか、落ち着きを見せるようになってきている。

もともとフィジカルはJ1の中でもトップクラスであり、当たり負けすることはない。おかしなポジショニングで穴を作ってしまうことが序盤戦は多かったが、この日はそういったミスもなく、守備は無難にこなし、攻撃では持ち味のミドルシュートで2試合連続ゴールをマークした。

2009年の札幌時代もシーズン序盤はさっぱりで、元コロンビア代表という立派な経歴の信ぴょう性が問われるようなプレーが多かったが、シーズンが進むにつれてチームの中でも存在感を示すようになっていった。もともとスロースターターなのか、戦術を理解するのに時間がかかるタイプなのか、名古屋でも少し時間はかかったが、ようやくアンカー役を高いレベルでこなせるようになってきた。

<4-1-2-3>のアンカーシステムは役割が多くて非常に難しいポジションであるが、身体能力が高くて飛び道具のあるMFダニルソンが定着してくると、いよいよ名古屋は本物になってくる。

■ キレを見せる両ウイング

攻撃ではまだ爆発力は見せられておらず、FWケネディの高い得点能力に助けられている試合が多いが、MF中村直とMFマグヌンが攻撃的MFに入って、右にFW金崎、左にFW玉田、中央にFWケネディという布陣は個の力が強烈で相手にとっては脅威である。もちろん、Jリーグを超えた高さを誇るセットプレーも武器となる。

まだ攻撃面ではスッキリとしていない部分もあって、16試合で26ゴールとゴールラッシュには至っていないが、FW金崎とFW玉田がキレを見せており、両サイドに単独突破できる選手がいるのが強みである。

不安は故障者。チームのバランスを保つ上でも重要な役割を担うMF中村直が肉離れのため途中交代したのが気がかりで、MFブルザノビッチが攻撃的MFに入るとボールの流れが止まってしまう可能性があるのでMF中村直に早期復帰に期待したい。もし、回復が長引くようだとまたチームのリズムがおかしくなる可能性もある。

■ 復調気配の中村俊輔

一方の横浜FMは中断後は1勝2敗1分けとなった。17歳のFW小野という選手に注目が集まっているが、南アフリカワールドカップの日本代表だったMF中村俊輔の調子が上がってきていて、この日は惜しいプレーが多かった。ワールドカップ直前の4月・5月あたりは明らかにコンディションが悪く、頭の中も整理できていないという印象が残ったが、この日はプレーイメージも良かった。

もともと「スピード」で勝負する選手ではなく、「テクニック」と「キレ」で勝負する選手である。テクニックは錆つかないが、「キレ」はコンディションによって左右されてしまう。4月・5月ごろは、その「キレ」がなくて自信も失っていたように見えたが、コンディションが上がってきたことで「キレ」も増し、決定的な仕事に絡むシーンが多くなってきた。さすがにキックの精度は周りの選手よりもワンランク上。日本代表は引退する意向を示しているが、Jリーグの中では活躍する余地は十分にある。

問題はスタミナ面であり、この日は前半は「7.0」のプレーを見せたが、後半は失速して「5.0」のプレー。トータルで見ると「6.0」で及第点以上であるが、前半のようなプレーを続けないとチームは苦しくなる。後半に目立たなくなったことが、連戦の影響であればいいが・・・。

■ 前線と中盤の構成は?

横浜FMはMF清水をボランチ気味に使っているが、この試合はブレーキだった。1点目のバックパスのミスは試合の流れを大きく変えてしまう痛恨のミスだったが、それ以外でも守備で穴をあけてしまうシーンが多かった。

名古屋は両サイドにFW金崎、FW玉田がいて、1人でもサイドを突破できる選手がいるが、横浜FMはMF小椋、MF清水の位置でうまく守備が出来ていなかったので、FW金崎やFW玉田が横浜FMのサイドバックと1対1となるシーンが多く、かなり危険な状態であった。

この日は横浜FMはコンディションが上がっていないという理由でFW渡邉千真をスタメンから外したが、中盤から前線にかけてのメンバーが定まっておらず、試合ごとにスタメンがコロコロと入れ替わる感じになってきている。MF兵藤といったユーティリティーな選手がいて、いろいろな組み合わせが可能なチーム構成であるともいえるが、成熟度は低い。

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