W杯ファイナルのカードが決まったね。スペイン対オランダ。どちらが勝っても初優勝同士の組み合わせになった。
この対戦を予想できた人は多くないだろうけど、FIFAランク2位と4位の対決だけに、驚きはないだろう。どちらも攻撃的なチームだし、試合が非常に楽しみだね。

準決勝でスペインに敗れたドイツは、まるで今までの戦いが嘘だったかのような負けっぷりだった。一体どうしちゃったんだろう、という感じだ。それまでのアグレッシブで組織だったサッカーは鳴りを潜め、ボールゲームのうまいスペインに対してほとんど何もできずに負けたよね。
ミュラーが出場停止だったのもその一因に挙げられているけど、それが大きな理由ではないだろう。若手チームの経験不足が露呈されたなんて意見も目立つが、確かに若い選手も混じっているけど、皆しかるべき経験を積んでいるし、ベテランもいる。どうしてああいう内容になってしまったか、説明がつかないよね。
 
一つ言えば、これがトーナメントの難しさだね。チームとしてのコンディション調整、メンタルの持っていき方に失敗があったのかもしれない。一発勝負の試合では時としてこういうことが起きる。どちらも100%、あるいはそれ以上の力を発揮し合って戦えた試合は、今大会で果たして何試合あるかな。大会を勝ち上がるというのは非常に難しく、予想できないことだというのを改めて感じるよ。
 
一方で、“W杯が一番”だった時代の終わりも感じる大会だ。世界一の祭典、4年に一度の最高の舞台であったはずのW杯は、いまや欧州チャンピオンズリーグの後塵を拝している。それはプレーレベルの面だけでなく、注目度や重要度という点においてもだ。
そうした傾向は前回大会から顕著になってきたと思うけど、チャンピオンズリーグで覇権を争っているような欧州トップクラブで活躍する選手たちにとって、W杯は心身ともに最高のコンディションで迎えられる大会ではなくなっている。とても残念なことだけど、これは紛れもない事実だね。

昔と違い、今は1人のスーパースターが輝くサッカーではなくなっているけど、W杯においては、その一つの要因としてトップ選手たちがコンディション、メンタルの部分で問題を抱えていることも挙げられる。5月まで極限状態でチャンピオンズリーグを戦ってきた選手が、6月のW杯でフルに活躍するのはとても難しい。それだけに、オランダのスナイデルやスペインのバルサ勢のプレーには恐れ入るけどね。
 
南アフリカでも、海外の記者たちと「W杯は9月開幕にすべきなんじゃないか」なんて話をしたよ。古き良き時代のW杯は、変化の時を迎えているかもしれない。その節目の大会で、新しいチャンピオンが生まれるというのも、なんだか象徴的だ。(了)