日本のサッカーが、世界と伍して戦うにはどうしたらいいのか。そんなテーマが持ち上がると、決まって登場する国がある。北中米カリブ海の雄メキシコだ。

 身体的に日本人に似た選手が多いチーム構成で、メキシコはW杯でコンスタントにグループリーグを突破している。身体的な強さや高さで世界に見劣りする日本にとって、ショートパスをしっかりとつないでいくメキシコのサッカーは、格好のサンプルと考えられている。

 先のSBSカップで来日したU−18メキシコ代表も、同国のフル代表を連想させる好チームだった。ピッチ上のあちこちでトライアングル以上の関係が形成され、最低でも三つのパスコースを作り出す。そうかといって、パス、パス、パスの連続でもない。個人で局面を打開していく勇敢さもある。ちょっとした狡賢さも持っていた。

 ただ、メキシコが見せる技術や戦術のレベルの高さは、ある程度予想できたことでもある。個人的に新鮮で印象深かったのは、ゲームに臨む姿勢だった。
 直前の試合で日本が優勝を決めたため、静岡ユースとメキシコの最終戦は消化試合となってしまった。「チャンピオンが決まったことでモチベーションが落ちてしまい、前半はうまくいかなかった」というファン・カルロス・チャベス監督の言葉どおり、前半は低調な内容に終始してしまう。ここまで2連敗の静岡ユースから、1点も奪えずにハーフタイムを迎えた。

 それがどうだろう。後半になると躍動感のあるサッカーを取り戻し、4−1で快勝したのである。チャベス監督が選手たちに訴えかけたのは、国を背負うことの誇りだった。

「選手たちには国を代表する誇りを忘れずに、代表としての責任を持つことをつねに求めています。試合のまえには、ユニホームが汗でビショビショになるぐらいに走りなさいと、選手に伝えます。国旗のために頑張ろう、と」

 代表としての「誇り」は、日本代表の岡田武史監督も選手たちに伝えている。北京オリンピックでU−23代表を指揮した反町康治監督(当時)も、「誇り」という言葉を使って選手を鼓舞していた。しかし、北京で「日本人としての誇り」を感じることはできなかった。南アフリカW杯の出場を決めた日本代表も、予選突破後のカタール戦ではまさに消化試合というゲームを演じている。

 日本代表は9月にオランダと対戦する。世界のトップランカーとの対戦をまえにした選手たちは、監督やコーチから何かを言われなくてもモチベーションを高めていく。

 だから、僕自身は4日後のガーナ戦に注目している。オランダ戦ですべてを出し切ってもなお、ガーナ相手にしっかりと戦う姿勢を見たい。「国を背負う誇り」を示してほしいのだ。フル代表が「誇り」を見せることで、国際試合で惜しみなく力を発揮することで「誇り=プライド」となっていく。そういう循環を作り出していくことで、U−18日本代表の選手たちを刺激してほしいのだ。

 ここから先は余談である。

 SBSカップに出場したU−18メキシコ代表には、180センチ以上のフィールドプレーヤーが7人もいた。GKを除いた登録選手は14人だから、半分が180センチ以上ということになる。

 ちなみに、U−18日本は2人、静岡ユースは3人、U−18フランスは4人である。メキシコは大会随一の大型チームだったのだ。2011年のU−20ワールドカップ出場を選手たちが順調に成長していけば、数年後のメキシコは身体能力でも世界に比肩するチームとなるかもしれない。

戸塚啓コラム - サッカー日本代表を徹底解剖