【最新ハイテク講座】チン事件も、チン!で何でも温まる「電子レンジ」の秘密
一人暮らしから家庭生活まで、必要不可欠な機器となったのが「電子レンジ」。4月から一人暮らしをする人にとっては強い味方となってくれる調理器具だ。
この火を使わないのに食品を温められる「電子レンジ」とは、いったいどのような仕組みで動いているのだろうか。
今回は、キッチンのハイテクグッズ「電子レンジ」の歴史とそれを支える技術をさぐってみよう。
■電子レンジって、なに?
電子レンジは、英語名を「microwave oven(マイクロウェーブ・オーブン)」と呼び、電磁波を利用して食品を加熱する調理機器だ。オーブンとは違い何でも加熱できる訳ではなく、水分を含んだ食品でないと加熱できない。
●電子レンジを支える技術
電子レンジの発明者は、アメリカのレイセオン社に勤めていたレーダー設備設置技師 パーシー・スペンサー氏とされている。ある日、パーシー・スペンサー氏はポケットの中に入れていたピーナッツ・クラスター・バーが溶けていたことから電磁波が調理に使用できると考えたという。
電子レンジは、マグネトロンの先端に設置したアンテナから電磁波を放出する。電磁波の周波数は水分子の共鳴周波数である2.45GHz、またはそれに近い周波数を採用している。2.45GHzとは、1秒間に24億5千万回も水分子を振動させる性質を持っている。電磁波が食品にあたると、食品の中に含まれる水の分子を振動させ、摩擦熱を生じさせ、その熱が広がって食品全体が温められるのだ。
摩擦熱は、もっとも身近な熱のひとつで、手と手をこすり合わせると手の平が温かくなるのも摩擦熱である。古代人は、木と木をこすり合わせて火をおこしたが、これも摩擦熱の応用だ。
●はじめての電子レンジ
電子レンジの歴史は、まだ誕生してから60年足らずしか経っていない。世界初の電子レンジは、レイセオン社が1947年に発売した製品で、同社が1946年に特許をとった「マイクロ波による調理」の技術を応用したものだ。発売間もない電子レンジは、高さが180cm、重量が340kgと巨大なもので、消費電力は3,000Wもあった。
国産第一号の電子レンジは、シャープが1962年に出した業務用電子レンジだといわれており、同レンジは1964年に開通の東海道新幹線のビュッフェ車にも備え付けられた。一般向けの電子レンジが登場したのは、1965年になってからだといわれている。
●「チン!」を誕生させた意外なモノ
電子レンジでは、調理が完了すると、音を鳴らしてユーザーに調理の完了を知らせてくれる。もっともポプラーな音は「チン!」という音であろう。主婦の中には、電子レンジで食品を温めることを「チンする」と言う人がいるほどだ。
「チン!」という音はどうやって誕生したのだろうか?
日本ではじめて電子レンジを出したシャープの研究室の近くには自転車店が多く、研究者が自転車のベルを電子レンジに取り付けたのが直接の理由だという。アルミを絞ったベルでコストをおさえ、バネを使って音の強弱を調整したようだ。
※参考
夕刊フジブログ
●電子レンジで使えない食器
電子レンジは、食品の中の水分子に電磁波をあてる必要があるため、食器の材質によって使えないものがある。陶器やガラスなどの食器は、水を含まないので電子レンジでの調理に利用できるが、金属容器は電子レンジで使用できない。
電磁波は金属にあたると反射する性質があるため、金属容器と電子レンジ内の壁面金属との間で放電する可能性があり、大変危険だ。
●電磁波は大丈夫?
電子レンジから発せられる電磁波は、人体に火傷や白内障などの症状を引き起こす可能性がある。各メーカーは、独自の電磁波対策を行っているが、もっとも代表的な対策は「電磁波シールド」だ。
電子レンジの扉をよく見ると、網目状のシートが見えるだろう。これが電磁波シールドだ。電磁波は、その波長に合わせた目の金属製メッシュで、電子レンジの電磁波を遮断できる特徴を持っている。このシールドで電子レンジ全体を覆うことで、電磁波を外に漏れないようにしている訳だ。
■電子レンジの未来と課題
電子レンジは、時代とともに進化しているが、課題も残されている。
●チン事件が続出
電子レンジでは、過去から今に至るまで“チン事件”が続出している。
一番有名な話は、通称「猫チン事件」だろう。ある主婦が飼い猫を洗った後、その猫の毛を乾かすために電子レンジを使ったところ、猫が死んでしまった。主婦は、電子レンジの説明書に「猫を乾燥させてはいけません」と書かれていないとして、電子レンジのメーカーを訴え、多額の賠償金を得た。その後、電子レンジの説明書に「ペットを入れないでください」の注意書きが追加されたというのだ。しかし、これは有名な都市伝説で、このような訴訟があったという記録は実際にはないのだが、似たような悲惨な事件は起きている。
・強盗に入った少年らがペットの猫を電子レンジで殺害、ネットで批判続出
また、アメリカでは赤ん坊や幼児を電子レンジに入れるという衝撃的な事件が起きている。
2005年8月、アメリカのオハイオ州デイトンでは、当時25歳の母親が自分の赤ん坊を電子レンジに入れて、死亡させたとして殺人罪で起訴された。死亡の原因は、高温の熱による内臓損傷であった。
2007年5月には、同じアメリカのアーカンソー州ジョシュア・モールディンで当時19歳の父親が電子レンジに2歳の娘を入れて重傷の火傷を負わせたとして逮捕されている。
●自動販売機も電子レンジで進化
意外なとことでは、電子レンジの登場により自動販売機が進化したのをご存じだろうか。1970年の日本万国博覧会では、電子レンジを内蔵したハンバーガーの自動販売機が登場して話題となった。
今日では、高速道路のサービスエリアや行楽地などのレジャー施設などで、焼きおにぎりやたいやき、唐揚げチキンなどを加熱する電子レンジ内蔵の自動販売機にお目に掛かることができる。
・冷凍食品自動販売機 - ニチレイ
参考
電子レンジ | マグネトロン - ウィキペディア
電磁波シールドメッシュ(電磁波防止繊維素材) - マックコーポレーション
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この火を使わないのに食品を温められる「電子レンジ」とは、いったいどのような仕組みで動いているのだろうか。
今回は、キッチンのハイテクグッズ「電子レンジ」の歴史とそれを支える技術をさぐってみよう。
■電子レンジって、なに?
電子レンジは、英語名を「microwave oven(マイクロウェーブ・オーブン)」と呼び、電磁波を利用して食品を加熱する調理機器だ。オーブンとは違い何でも加熱できる訳ではなく、水分を含んだ食品でないと加熱できない。
電子レンジの発明者は、アメリカのレイセオン社に勤めていたレーダー設備設置技師 パーシー・スペンサー氏とされている。ある日、パーシー・スペンサー氏はポケットの中に入れていたピーナッツ・クラスター・バーが溶けていたことから電磁波が調理に使用できると考えたという。
電子レンジは、マグネトロンの先端に設置したアンテナから電磁波を放出する。電磁波の周波数は水分子の共鳴周波数である2.45GHz、またはそれに近い周波数を採用している。2.45GHzとは、1秒間に24億5千万回も水分子を振動させる性質を持っている。電磁波が食品にあたると、食品の中に含まれる水の分子を振動させ、摩擦熱を生じさせ、その熱が広がって食品全体が温められるのだ。
摩擦熱は、もっとも身近な熱のひとつで、手と手をこすり合わせると手の平が温かくなるのも摩擦熱である。古代人は、木と木をこすり合わせて火をおこしたが、これも摩擦熱の応用だ。
●はじめての電子レンジ
電子レンジの歴史は、まだ誕生してから60年足らずしか経っていない。世界初の電子レンジは、レイセオン社が1947年に発売した製品で、同社が1946年に特許をとった「マイクロ波による調理」の技術を応用したものだ。発売間もない電子レンジは、高さが180cm、重量が340kgと巨大なもので、消費電力は3,000Wもあった。
国産第一号の電子レンジは、シャープが1962年に出した業務用電子レンジだといわれており、同レンジは1964年に開通の東海道新幹線のビュッフェ車にも備え付けられた。一般向けの電子レンジが登場したのは、1965年になってからだといわれている。
●「チン!」を誕生させた意外なモノ
電子レンジでは、調理が完了すると、音を鳴らしてユーザーに調理の完了を知らせてくれる。もっともポプラーな音は「チン!」という音であろう。主婦の中には、電子レンジで食品を温めることを「チンする」と言う人がいるほどだ。
「チン!」という音はどうやって誕生したのだろうか?
日本ではじめて電子レンジを出したシャープの研究室の近くには自転車店が多く、研究者が自転車のベルを電子レンジに取り付けたのが直接の理由だという。アルミを絞ったベルでコストをおさえ、バネを使って音の強弱を調整したようだ。
※参考
夕刊フジブログ
●電子レンジで使えない食器
電子レンジは、食品の中の水分子に電磁波をあてる必要があるため、食器の材質によって使えないものがある。陶器やガラスなどの食器は、水を含まないので電子レンジでの調理に利用できるが、金属容器は電子レンジで使用できない。
電磁波は金属にあたると反射する性質があるため、金属容器と電子レンジ内の壁面金属との間で放電する可能性があり、大変危険だ。
●電磁波は大丈夫?
電子レンジから発せられる電磁波は、人体に火傷や白内障などの症状を引き起こす可能性がある。各メーカーは、独自の電磁波対策を行っているが、もっとも代表的な対策は「電磁波シールド」だ。
電子レンジの扉をよく見ると、網目状のシートが見えるだろう。これが電磁波シールドだ。電磁波は、その波長に合わせた目の金属製メッシュで、電子レンジの電磁波を遮断できる特徴を持っている。このシールドで電子レンジ全体を覆うことで、電磁波を外に漏れないようにしている訳だ。
■電子レンジの未来と課題
電子レンジは、時代とともに進化しているが、課題も残されている。
●チン事件が続出
電子レンジでは、過去から今に至るまで“チン事件”が続出している。
一番有名な話は、通称「猫チン事件」だろう。ある主婦が飼い猫を洗った後、その猫の毛を乾かすために電子レンジを使ったところ、猫が死んでしまった。主婦は、電子レンジの説明書に「猫を乾燥させてはいけません」と書かれていないとして、電子レンジのメーカーを訴え、多額の賠償金を得た。その後、電子レンジの説明書に「ペットを入れないでください」の注意書きが追加されたというのだ。しかし、これは有名な都市伝説で、このような訴訟があったという記録は実際にはないのだが、似たような悲惨な事件は起きている。
・強盗に入った少年らがペットの猫を電子レンジで殺害、ネットで批判続出
また、アメリカでは赤ん坊や幼児を電子レンジに入れるという衝撃的な事件が起きている。
2005年8月、アメリカのオハイオ州デイトンでは、当時25歳の母親が自分の赤ん坊を電子レンジに入れて、死亡させたとして殺人罪で起訴された。死亡の原因は、高温の熱による内臓損傷であった。
2007年5月には、同じアメリカのアーカンソー州ジョシュア・モールディンで当時19歳の父親が電子レンジに2歳の娘を入れて重傷の火傷を負わせたとして逮捕されている。
●自動販売機も電子レンジで進化
意外なとことでは、電子レンジの登場により自動販売機が進化したのをご存じだろうか。1970年の日本万国博覧会では、電子レンジを内蔵したハンバーガーの自動販売機が登場して話題となった。
今日では、高速道路のサービスエリアや行楽地などのレジャー施設などで、焼きおにぎりやたいやき、唐揚げチキンなどを加熱する電子レンジ内蔵の自動販売機にお目に掛かることができる。
・冷凍食品自動販売機 - ニチレイ
参考
電子レンジ | マグネトロン - ウィキペディア
電磁波シールドメッシュ(電磁波防止繊維素材) - マックコーポレーション
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