卒業生謝辞から「イージス」消える 大学「要請ない」と釈明も...県知事「そこまでやる必要なかったのでは」
あいさつで政治問題に触れたら大学に削除された――。秋田公立美術大(秋田市)の卒業式で、学生が謝辞で地上配備型迎撃システムに触れた部分が大学の要請で「削除された」とされる問題が波紋を広げている。
一方で大学は取材に「削除を要請した事実はない」と主張。ただ、「学生がそういう風に受け取って学生みずから削除することになったのは申し訳ない」と話す。
大学からも近い地区に「イージスアショア」検討
政府が導入を進める地上配備型迎撃システム「イージスアショア」。配備候補地には秋田市の陸上自衛隊新屋演習場が挙がっており、その是非をめぐり議論となっている。
秋田公立美術大の2019年3月21日の卒業式では、卒業生の代表が謝辞で「大学からも近い、住宅や学校が密集する新屋(あらや)地区に常設型迎撃ミサイル基地の配備計画が持ち上がるなど、私たちの在学中に地域住民や大学関係者にとって重要な問題が起こったこともまた事実です(中略)私たち卒業生は、今後も秋田公立美大の学生および地域の皆様が平和な生活を過ごせるよう、心から願っています」などと触れる予定だった。
しかし、秋田県の地元紙「秋田魁新報」の22日付記事によれば、大学側から上記の部分を削除して欲しいと言われ、学生は「最後は自分で(読まないことを)判断したが、『なぜこれがだめなの?』と思った」などとコメントしている。
SNS上では批判が上がり、秋田県の佐竹敬久知事も25日の定例会見で「そこまでやる必要はなかったのでは」と苦言を呈した。
「地元にとってデリケートな問題なので...」
秋田公立美術大の企画課長は26日、J-CASTニュースの取材に「削除を要請した事実はない」と話す。
学生に対応した学生課長の聞き取りによれば、卒業式前日の夕方に「イージスアショアは地元にとってデリケートな問題なので、卒業式にふさわしいかどうか上に確認させてほしい」と学生に電話で伝えたという。
それから1、2時間ほど過ぎて学生から「その部分には触れない内容にします」との旨の回答があり、修正の原稿が届いた。大学内で相談したり意思決定したりする前に連絡があったため、大学でやりとりを把握していたのは学生課長のみだったという。
大学としては削除を求める意図はなかったものの、「学生がそういう風に受け取って学生みずから削除することになったのは申し訳ない」とした。
(J-CASTニュース 谷本陵)