ロンドン五輪では日本選手団の副団長を務めた(12年7月撮影)

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日本オリンピック委員会(JOC)副会長で、自民党参院議員会長の橋本聖子氏(54)の発言が話題だ。

白血病を公表した競泳女子の池江璃花子選手について、「オリンピックの神様が池江璃花子の体を使って...」などとイベントで講演したことが、不用意な発言なのではないかと指摘されている。

「池江選手を使って叱咤激励してくれているのではないかとすら思った」

講演したのは、2019年2月16日に行われた、20年東京オリンピック・パラリンピック関連のイベント。各社報道を総合すると、橋本氏は「オリンピックの神様が、池江璃花子の体を使って、『オリンピック・パラリンピックをもっと大きな視点で考えなさい』と言ってきたのかな」と発言したうえで、スポーツ界がガバナンス(統治)やコンプライアンス(法令順守)に揺れるなか、「そんなことで悩んでいる場合ではない。もっと前向きにやりなさいよ、と池江選手を使って叱咤激励してくれているのではないかとすら思った」と話した。

イベント終了後、報道陣から発言の真意を問われると、橋本氏は「神様は乗り越えられない試練は与えない」との池江選手のコメントに触れて、スポーツ界全体で治療に専念できたり、頑張ってもらえたりする環境づくりをしなければならないとの考えを示した。

一連の発言に対して、ネット上ではガバナンスやコンプライアンスの軽視に受け取れるとの非難もあるが、「オリンピックの神様」への苦言も多い。ツイッターでは「静かにしとけ!」「五輪の神様ってなんだよ」といった反応が続出。日本共産党の小池晃書記局長(参院議員)も、

「池江さんのことを政治家があれこれ言うのはもうやめるべきだと思います。静かに治療に専念していただくことが何より大事なのだから」

とツイートした。

その一方で、発言の背景には、橋本氏自身が大病を患った経験もあるのでは、との指摘もある。実際、今回の講演でも病歴について触れられているが、紙面に引いていないメディアもある。

自らも病魔と闘った過去が

1992年のアルベールビル五輪での銅メダリスト(女子スピードスケート1500メートル)として知られる橋本氏。幼いころからスケートに親しんでいたが、小学校3年生で腎臓病を患い、2年間スポーツから離れざるを得なかった。橋本氏の公式サイトには、同い年の患者が亡くなった時のエピソードとともに、母親からかけられた、こんな言葉が載っている。

「神様は誰に対しても平等に、喜びと悲しみと、楽しさ、苦しさを与えてくれる。だから、最初につらいことや悲しいことを与えられた人には、後に喜びや楽しみがたくさん残っている。だから、今病気になってありがたいと思いなさい」

病魔に襲われたのは、この時だけではない。2014年10月7日の日本経済新聞朝刊「スポートピア」欄では、腎臓病の再発を振り返っている。練習できないストレスで「胃に穴が開いて円形脱毛症に」。ストレス性の呼吸筋不全症を併発したが、B型肝炎にも院内感染してしまい、「腎臓病と肝炎と呼吸筋不全症という三重苦に陥った」という。当時は高校3年生、ちょうどいまの池江選手と同じだ。

なお橋本氏はその後、19歳でサラエボ五輪に初出場。スピードスケートと自転車競技で、夏冬あわせて7回出場し、参院議員1期目に「二足のわらじ」で挑んだアトランタ五輪(96年)を最後に、現役を引退している。