米国で行われた米韓首脳会談で文在寅大統領が「米・北首脳会談」という言い回しを用いたことが韓国内で話題となっています。これまで頑ななまでに「北・米首脳会談」としてきたのですが、この「順序の入れ替え」にはどんな意味があるのでしょうか。今回の無料メルマガ『キムチパワー』で、韓国在住歴30年の日本人著者が考察しています。

「朝米」か「米朝」か

文在寅(ムン・ジェイン)大統領は9月24日(米現地時間)に開かれた韓米首脳会談の冒頭で「米・北首脳会談」「北朝鮮の非核化」などの表現を使用した。

文大統領が公式会談の場で「米・北の会談」「北朝鮮の非核化」などの表現を使ったのは異例のこと。大統領府と政府はこれまで米国と北朝鮮間会談を「北・米首脳会談」とし、非核化問題は北朝鮮の立場を反映して「韓半島の非核化」としてきた。

これの何が問題なのかというと、韓国の報道では、これまでは常に北と米の会談のことなら「北・米会談」のように「北」を先に言い次に「米」をつけるのが習わしだった。

ところで、9月24日(現地)に行なわれた文大統領とトランプ米大統領との首脳会談で、はじめて米を先に北を次に、つまり「米・北首脳会談」という表現を使ったということ。これは日本式には「米朝」となり、日本では当たり前の表記法となるわけだが。

これまでは「朝米」としてきたものをなぜ今「米朝」の順にしたのかという点が今回の内容の要点。さらにはこれまでは「韓半島の非核化」としてきたものを今になって「北朝鮮の非核化」と明示的に表現しているのか。

この点に関して大統領府の関係者は、「特別な意味が込められているのではない」と語った。韓国大統領が米国に行き、米大統領と会って話す場合なので、最も近い国(米国)を立てて「米朝」としただけ、ということ。

韓国大統領が北朝鮮に行き、北の大統領つまり金正恩氏と会って話す場合には、「朝米」となるだろうと。さらに、二国(米国・北朝鮮)でない韓国などで会談に臨む時は、通常としては「朝米」と呼ぶものと理解していると語った。

これまではいかなる場合でも同胞である北朝鮮を立てて「朝米」の一つ表現だったが、今回、米国での会談だとはいえ「米朝」としたことは、北朝鮮を無視したものではなく、ある意味かえって北朝鮮との絆が深くなり信頼が出てきたゆえの表現とも受け取れる。

非核化にしてもこれまでは「韓半島の非核化」一本やりだったのが、今回はじめて「北朝鮮の非核化」と北朝鮮を露骨にダイレクトに浮き上がらせている。

これも、先日(9月19日)の文在寅と金正恩との南北首脳会談で、お互いに深いところまで話し合い、相互の理解や信頼がかなり高くなっているがゆえの「北朝鮮の非核化」ではないかと筆者は考える。

つまり、北朝鮮のことを腫れ物にさわるようにそうっとそうっと、騙し騙しやるのではなく、今や互いに独立した「オトナ」として扱える段階に入ったということなのではなかろうか。北に気兼ねなくしゃべれるようになったということだと理解する。南北関係、さらには米朝関係は、水面下で粛々と進展していると判断してよさそうである。

image by: Shutterstock.com

MAG2 NEWS