「いろんな病院に診断書をもらっても、アルコール依存症というのは出ていないんです。(中略)書いてくださったほうが何とか僕らも納得できるんです」
 
5月2日に行われた謝罪会見でそう語ったのは、TOKIOのメンバーである松岡昌宏。「山口達也はアルコール依存症なのではないか」――そんな憶測が飛び交っていることを受けての発言だった。
 
アルコール依存症患者などの診察を行っている新宿東口ハートクリニックの中田貴裕院長はこう語る。
 
「いわゆる“酒好き”なのか、アルコール依存症なのかという判断は非常に難しいです。一度に大量のお酒を飲めば依存症、というわけではない。いちばんのポイントは、自分でコントロールできないほど飲酒が習慣化してしまっているということです」
 
中田院長のもとにも、「自分は依存症かもしれない」と相談に来る人たちが後を絶たないという。
 
「酔って暴力を振るってしまった、自暴自棄になって飲んでしまう……そのような相談に来る人たちも、『アルコール依存症』と決めつけることはできません。多くの場合、自覚症状はほとんどなく、家族や親しい友人などが見抜いてあげる必要があるのです」
 
では、気づいてあげるべき“危険なサイン”とは何があげられるのだろうか。中田院長が続ける。
 
「代表的なものは、“隠れて飲む”ということでしょう。飲んだ空きビンなども、こっそりと自分で片づけてしまっている。ですから、なかなか気づけない場合も多いのです。もう一つは、“ごまかし”。あきらかに酔っていても、『酔っていない』と反論するケース。認知症患者が『忘れたの?』と聞かれても、『いや忘れてない!』と答えるのと似ていますね」
 
精神科医の香山リカさんは、「記憶をなくす」というのがひとつのサインだと語る。
 
「酔うと性格が豹変したり、昼間から飲んでしまう人もそうですね。アルコール依存症は、うつ病と合併しやすいのが特徴です。飲んでいないときはうつ状態で、そのストレスを解消するために飲むという悪循環に陥って、自殺してしまうケースもあるほどです」
 
もし夫や子どもが、アルコール依存症になってしまったら……。何か有効な対処法はあるのだろうか。
 
「依存症の人が自分で飲酒量を減らす、というのはとても難しいこと。最近では、飲みたいという欲求そのものを抑える薬が出ていますが、これは本人が自分の意思で飲まなければ意味がありません。つまり、“断酒教育”が必要です。しかし、ひとりでやめられないという人は、断酒の意志を確立するため、断酒会への参加が有効といえるでしょう」(香山さん)