三菱自動車、それでも黒字見込みのワケ 凋落は底をついたのか? カギは新車に
ルノー日産の傘下となった三菱自動車ですが、2016年度は通期営業黒字を達成する見込みです。なぜそのようなことが可能なのでしょうか。
三菱自動車、2016年度は黒字達成か
2016年4月の、三菱自動車による衝撃の「燃費データ不正」発覚から、もう少しで1年が過ぎようとしています。
発覚から半年後の10月、三菱自動車はルノー日産アライアンスの一員になりました。とはいえ、日本での三菱自動車の信用は、まだまだ回復したとは言えないでしょう。2016年の国内新車販売は、前年比で15%から16%のマイナスとなりそうです。
ところが経営状況は最悪を脱したようで、2017年1月31日に三菱自動車は2016年度通期業績の上方修正を発表しています。なんだかんだと、2016年度は通期営業黒字を達成することができるというのです。
「第87回ジュネーブ国際モーターショー」にて初披露の、新型SUV「エクリプス クロス」(画像:三菱自動車)
独立独歩の会社から、ルノー日産アライアンスの傘下になるほどの衝撃の事件を引き起こしながらも、ビジネス面では、意外と軽傷で済んだといえるでしょう。それもそのはずで、三菱自動車にとっての日本市場は、もともとビジネス的にそれほどのボリュームはないのです。
国内不振の三菱自動車が平気なワケ
過去5年を振り返れば、三菱自動車は年間100万台ほどのクルマを世界中で販売してきました。ところが、事件発覚の直前である2015年の日本での販売は10万台ほど。つまり10分の1しかないのです。しかも、2012(平成24)年より毎年1万から2万台規模で販売が減少しています。なんと日本では、事件発覚前から販売激減が続いていたのです。
日本市場においてそんな最悪の成績でも、三菱自動車がトータルでの販売数が維持できたのは、世界全体での販売は悪くなかったからです。実際に海外のモーターショーへ取材に行くと、三菱自動車による燃費不正が話題となることはほとんどなく、どこに行っても日本国内よりも高い人気を誇っています。
まだまだ悪路が多いエリアでは、タフな4WDモデルが求められています。もともと三菱自動車の得意は4WD、4WDモデルの「ランサーエボリューション」による、「WRC(世界ラリー選手権)」での活躍もありました。フラッグシップの「パジェロ」は過酷なラリーレイドである「パリ・ダカールラリー」で何度も優勝しています。さらにピックアップトラックの「トライトン」という人気モデルも存在します。4WDが得意な、タフなブランドというイメージなんですね。三菱自動車の「ジェットファイター」と呼ばれる強面フェイスも、そのイメージにぴったりです。
2016年8月、日本国内では燃費不正発覚で揺れるなか、「インドネシア国際オートショー」に出展された「ミツビシ XM コンセプト」(画像:三菱自動車)。
しかし、海外市場でも不安要素がありました。それは新型車の不在です。最近の三菱自動車は、新車リリースのペースがガタッと落ちています。いくら世界中で高い人気を誇っていても、新しいクルマが出なければ、販売数を維持することは困難になります。
しかし、そんな不安を払拭するようなニュースが発表されました。
海外で上げられた復活の狼煙
2017年3月7日(火)より開催の「第87回ジュネーブ国際モーターショー」で、三菱自動車は新型モデルになる「エクリプス クロス」を発表。このコンパクトSUVは、2017年秋の欧州発売を皮切に、日本や北米、オーストラリアなど世界展開するといいます。
また、昨年秋の「パリモーターショー2016」では次期「パジェロ」と噂される大型SUVのコンセプトカー「ミツビシGT-PHEVコンセプト」を発表。2016年8月の「インドネシア国際オートショー」では小型MPVのコンセプト「ミツビシXMコンセプト」も発表しています。歩みは遅いかもしれませんが、ジワジワと新型車の用意は進んでいるようです。
「パリモーターショー2016」にて世界初披露された「ミツビシ GT-PHEV コンセプト」(画像:三菱自動車)。
三菱自動車が日本で信用を回復するには、まだまだ時間がかかりそうですが、海外ビジネスは新型車効果で上向きになるのも近いはず。三菱自動車の復活は、海外市場からスタートすることになりそうです。
【画像】新型車「エクリプス クロス」の個性的な後姿
三菱自動車は「エクリプス クロス」の特長のひとつとして「行動意欲を掻き立てる個性的なデザイン」を挙げる(画像:三菱自動車)。