教授の解雇処分は岡山大からの「報復」措置だったのか

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岡山大学で「論文不正問題」を内部告発した教授が、大学側から解雇されようとしている。教授側は裁判所に解雇停止の仮処分を申し立てているが、大学は「現時点で裁判所から通知がないので分かりません」としている。

内部告発者への「報復」「制裁」ではないか、とする見方がネットで出ている。

別のパワハラ騒ぎで停職処分も

薬学部の森山芳則教授と榎本秀一教授は、2012年12月と13年3月に医学部の論文に不正があると告発した。計31本の論文に、流用やねつ造の不正行為があったとする内容だった。

同大は15年3月、調査結果をサイト上で発表。対象となった1本の論文について「実験結果の画像と異なる画像を誤って掲載した」と認めつつも、「誤って掲載したものであり、故意によるものではないことから、不正行為は認定しない」とした。

一方、調査結果が出るまでの期間、大学と2教授の間には別の騒動もあった。14年9月、大学はこの両教授に別の所属教員に対するパワーハラスメントがあったとして、教授らに停職9か月の懲戒処分を下していた。2教授はこれを不当としていた。

大学側は明らかにしていないが、教授側の訴状によると、その後、大学の教育研究評議会は15年10月26日付で2教授を解雇する審査結果を出した。

2教授は12月7日、岡山地裁に「解雇権の乱用で無効であることは明らか」などとして、解雇停止の仮処分を申し立てた。大学側はJ-CASTニュースの取材に対し、「現時点で裁判所から通知がないので分かりません」と回答し、くわしい事実関係の説明はなかった。

「公益通報者保護法」では無効

こうしたことが複数のブログなどで話題になると、ツイッターなどネットには

「告発した側が謹慎処分の果てに解雇処分とはとんでもなく異常な事態といえるだろう」
「岡山大の告発者に対する報復の疑い」

と不正論文問題で騒ぎを起こしたことへの「報復」や「意趣返し」ではないか、とする見方が広がっているが、岡山大学が詳しい説明をしていないため、はっきりしない。

これまでも内部告発者に対して報復をしたのではないか、とみられる事案はいろいろ問題になってきた。

15年に入っても、2月に鹿児島市の障害者の就労支援施設で、男性元職員が「幹部が女性障害者に暴力を振るった」と市に通報したところ、施設から110万円の損害賠償訴訟を起こされた。

さいたま市の同様の施設でも、元職員女性が「上司が男性障害者の裸の写真を撮影した」などとして、3月に市に通報した後、施設側から670万円の賠償請求の通知があった。この女性は争う構えとされる。

企業や組織の内部告発者を保護するため2006年4月に施行された「公益通報者保護法」は、告発したことで解雇や減給などの不利益を与えることを無効としている。ただ、罰則規定はない。こうしたことが内部告発が広がらない一因とも指摘され、東京弁護士会などは相談窓口を設置している。