SEALDsのデモ活動は「失敗」に終わったのか?

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 今年の夏に印象に残ったニュースといえば、国会前で連日行われた安保法制に対するデモ活動ではないでしょうか。このニュースで印象的だったのは、「SEALDs」という学生団体の運動がきっかけの一つとなり、近年ではあまり見られない規模の抗議デモとなったことです。
 若者の政治への無関心が嘆かれる中、政治に対してハッキリと「NO」を突きつけ、自らデモを率いて国会やテレビ番組にも登場した奥田愛基さん(SEALDs創設メンバーの一人)の姿は多くの人々が衝撃を受けたでしょう。
 実際のデモの参加者数は明確になってはいませんが(12万人とも3万人とも言われている)、国会前には多くの人が集まり、熱気に溢れたデモ活動がなされたことは事実です。

■今回のデモ活動の「目標」っていったいなに?
 では、デモ活動は「成功」したのでしょうか? 9月19日午前2時過ぎ、安保関連法案は参院本会議で可決され、成立しました。仮に、デモ活動の目標が「安保関連法案の廃案」であったならば、SEALDsがきっかけとなった今回のデモ活動は、目標を達成できず「失敗」に終わったと評価できるでしょう。一方で、デモ活動の目標が「国民、特に若者の政治への関心を高める」というものであれば、「成功」だったといえるかもしれません。
 今回のデモ活動については、「素晴らしかった!若者の政治意識が高まるのを感じた!」と評価する人もいれば、「結局、法案は可決されたじゃん。デモなんて意味ないよ」と評価する人もいます。このことからも分かるように、実は、デモを成功とみなすか失敗とみなすかは、デモの「目標」をどう捉えるかによって変わってくるのです。

■“戦略”とは「目標達成につながる勝利」を選ぶこと
 SEALDsデモ活動は失敗だったのか成功だったのか、それを決めることは難しいでしょう。
 この問題は前述の通り、どの観点から「成功であるかどうか」を判断するかによって決まります。そして、はっきりと言い切れるのは、明確な戦略が無ければ、どのような目標も達成することはできないということです。
 大東亜戦争における日本軍の組織的な失敗を研究し、その内容はビジネスにも応用できるとして今でも読まれている名著『失敗の本質』の入門書といえる『「超」入門 失敗の本質』(鈴木博毅/著、ダイヤモンド社/刊)の中に、「戦略とは『目標達成につながる勝利』を選ぶこと」という言葉が出てきます。
 例えば、大東亜戦争での日本軍の目標は「米軍の抑止」であったはずなのに、日本軍が取った行動は、米軍を抑止する効果が無い島を17個も占拠するというものでした。17もの勝利を重ねた日本軍でしたが、その勝利は「米軍の抑止」という目標にはなんら結びつくものではなく、結果的に日本軍は敗北してしまいます。日本軍がすべきだったのは、目標達成につながらない無駄な勝利を重ねることではなく、目標達成につながる別の島や基地を占拠することだったのです。

 こういった「戦略」という観点から今回のデモ活動を見てみると、今までとは違った感想を抱くかもしれません。また、デモ活動に限らず、自分が行っている仕事や勉強が本当に「目標」の達成に結びついているものなのかを考えてみるきっかけとなるでしょう。
 人生において、何かしらの目標を達成するためには、確かな「戦略」が必要なのです。
(新刊JP編集部/オオイ・ケン)