「正義感や道徳心は両親から遺伝する」という可能性が示唆される
By J.K. Califf
身体能力、知力、容姿などが親から子へと遺伝することが知られていますが、「正義感」も遺伝する可能性があることが分かりました。
Precursors to morality in development as a complex interplay between neural, socioenvironmental, and behavioral facets
http://www.pnas.org/content/early/2015/08/27/1508832112
Babies have a better moral compass when their parents are fair and just, too | Ars Technica UK
ジェイソン・カウエル氏とジーン・デサティ氏は、正義感や道徳心が遺伝するのかを調べるために、生後12カ月から24カ月の幼児73人とその両親を調査しました。
一般に、幼児の行動を研究することは、人間が生まれ持った遺伝的性質と、生まれた後に環境から取得する後天的性質を切り分けるのに非常に有効です。しかし、幼児は自らの考えや行動を説明できないため、ある事象の因果関係を判断することは非常に難しいのも事実です。
今回の調査でも幼児の正義感を直接調べることは難しいことから、脳波を測定するelectroencephalography(EEG)ヘッドセットを使って、幼児の脳波を測定して正義感の強さを推測しています。
実験では、最初に幼児の両親に対して正義感や倫理感をチェックする試験が行われました。この試験は不公平な事例を見て人がどのように反応するかを見るためのテストで、正義感や道徳心の強い人と、そうでない人に分類されます。
続いて、幼児に「献身的で正義感の強いキャラクター」と「他人の邪魔ばかりする意地悪なキャラクター」という2種類の主人公が登場するアニメを見せました。アニメを見ているときの幼児の脳波を調べると、一部の幼児は、正義キャラが登場するアニメを見ているときの方が意地悪キャラのアニメを見ているときよりも強い反応を示すことが分かりました。そして、これらの反応を見せた幼児の両親のほとんどが、正義感テストで「正義感が高い人物」に分類されたことも分かったとのこと。
今回の実験から、直ちに正義感や道徳心が遺伝すると決めることは難しいとはいえ、これまで正義感や道徳心という後天的に獲得すると思われていた性質が、両親から遺伝的に受け継がれるものであるという可能性が示唆されています。