DeNAはユリエスキ・グリエルとの契約解除を発表した ©横浜DeNAベイスターズ

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 DeNAは2日、来日が延期となっていたユリエスキ・グリエルとの契約解除を発表した。同日に会見を行った高田繁GMは「(故障を理由に)いつ来るかわからない。契約違反ということで本人に通告しました。」と語った。

 当初はキューバリーグ終了の4日後にあたる3月26日に来日する予定だったグリエル。ところが、太もも裏の痛みを理由にそれを一度拒否。球団は28日にスタッフをキューバへと派遣し、30日に来日する方向で話を進めてきた。しかし、その約束も守られることはなく、結局グリエルは日本に姿を見せなかった。

 DeNAは、グリエルとキューバリーグに対し、痛めたとされる右太もも裏の診断書の提出や、来日して日本の病院で診察を受けて欲しい旨を伝えるも、答えは「No」。グリエル本人は横浜に戻りたいという意志を示したというが、交渉は難航。苦渋の決断を迫られたチームは、最終的に契約解除という道を選ぶこととなった。

 DeNAにとって、グリエルの存在は非常に大きい。梶谷、筒香、ロペスら中軸は開幕から好調を維持しているが、そこにグリエルが加わることで打線の破壊力はさらに強固なものになる。投手陣に一抹の不安が残るDeNAにとって、グリエルも含めた強力打線で長いシーズンを戦い抜くという青写真はあっただろう。

 しかし、そのプランは水泡に帰した。グリエルの穴を埋める新たな外国人野手を補強するとしても、グリエルと同等の選手を今からリストアップすることは困難を極めるはずである。

 では、DeNAがグリエルとの契約解除という大きな決断を下した理由はなんだったのか。

 球団関係者の話によると「野球協約に抵触する可能性はもちろんだが、現在のチーム状況と選手の士気に与える影響の大きさを考慮した結果」だという。球団の選択肢として、グリエルを待ち続けることは出来たが、それを行わなかったのは順調な滑り出しを見せたチームへの影響を最優先したから、ということだ。

 また、球団はグリエルを『制限選手』として申請し、NPBに復帰する際はDeNAに戻るとする手段もあったが、今回はそれも行っていない。つまり、グリエルが他球団でNPB復帰することも可能になる訳だが、前述の球団関係者によると「(今後もグリエルを)待ち続けているという姿勢につながる」という理由でこの選択肢も破棄。「一人の大物を特別扱いしない」という強い意向をはっきりと示した格好だ。

 今回の契約解除にあたり、DeNAは補償や違約金の要求はせず、またグリエル側も金銭面を要求しないことで合意したという。費用面での痛手こそ最小限に止められたDeNAだが、グリエルを待ち続けたことによる編成面でのマイナスは小さくない。それでも契約解除にいたった球団の姿勢は、現チームで戦い抜くという強い決意と自信に満ち溢れているものだといえるだろう。

 DeNAの称賛に値する決断があった一方で、一昨年に解禁となったキューバ国籍選手とのプロ契約の難しさを改めて認識させられた今回の一件。今後も同様の問題が起きないことを願うばかりだが…。