敦賀気比がついに頂点に、「スター不在」の反骨心

 第87回選抜高校野球大会は、ともに初の決勝進出となった1日の頂上決戦で敦賀気比(福井)が3−1で東海大四(北海道)を撃破。北陸勢初の優勝で幕を下ろした。

 昨夏の甲子園は、全国トップクラスと言われた強力打線を擁しながら大阪桐蔭(大阪)に敗れて準決勝敗退。春夏通じて3度目となる「4強の壁」にはね返された。

 しかし、今大会はエース・平沼翔太が全5試合603球を完投。準決勝では、背番号17の松本哲幣による史上初の2打席連続満塁弾が飛び出し、大阪桐蔭にリベンジした。決勝でも1−1で迎えた8回の勝負所で松本が2ラン。2試合連続となる一発が決勝点となり、一気に頂点へ駆け上がった。

 昨夏の主力が多く抜けながら、ここ一番での勝負強さを発揮し、掴んだ頂点。その裏には、「スター不在」が生んだ反骨心があった。

 元監督の林博美部長は大会序盤、3−0、2−1、4−3とロースコアで勝ち進むチームについて、苦笑いしていた。

「今年の打線はこんなもんですよ。去年の夏は、3〜6番がこちらが見ててもすごいなと思うくらい打ってくれたから。あとはつないで、投手がしっかり投げれば勝てた。でも、今年はこんなもんです」

“自分たちは強くない”という意識、一番最後まで練習していたのは“満塁男”松本

 確かに、昨年の敦賀気比打線はすごかった。主将を務めた3番・浅井洸耶(現青学大)、高校日本代表に入った4番・岡田耕太(現駒大)を筆頭に、高校でもトップクラスの強打者がズラリ。当然、打ち勝つ試合が多かったが、半面、脆さもあった。

 今年はその中軸がごっそりと抜け、戦い方を変えざるを得なかった。昨夏からエースを務める平沼を投打の中心に据え、最少失点に抑えて接戦をモノにするスタイルが自然と出来上がった。

 個々のレベルで言えば、去年より落ちるのは否めない。その思いがあったから、冬は打撃マシンで4〜5秒という短いスパンで打ち込むなどスイングの鋭さを磨き、例年にない練習量で肉体的にも精神的にも追い込み続けた。

「去年はチャンスを作って確実に走者を還すことができた。今年はチャンスを作っても、決め切れないことが多かった」

 優勝を決めた直後、主将のリードオフマン・篠原涼は、現チームへの反省を口にした。それでも、優勝できた理由は練習に裏打ちされた勝負強さにあるとも明かした。

「冬にずっとやってきたから、本当の『ここぞ』という場面で1本が出てくれた。いつも練習を一番、夜遅くまで残ってやっていたのは、松本でしたから。そういう風にしっかりやれば結果は出るんだと改めて思いました」

 決して自分たちは強くない――。そこからの反骨心が今年のチームを、春夏12度出場の名門で誰も成し遂げることのできなかった日本一に導いた。