オウム残党が貧困ビジネス「行きつく先は生活保護」
地下鉄サリン事件の発生から3月で20年を前に、希代のテロ教団が再注目されている。
東京地裁では、「オウム最後の逃亡犯」として17年の潜伏生活の末に逮捕された元信者・高橋克也被告(56)の裁判員裁判の真っ最中。テレビでも、事件を振り返る特番が相次ぎ放送されている。
オウムは事件後に解体され、「Aleph(アレフ)」と「ひかりの輪」に分裂。ちりじりになったオウムの残党たちにも時代の波が押し寄せている。
事情を知る公安調査庁の調査官は、
「高齢化した元信者の中には就職もままならず、貧困生活を余儀なくされる者が少なくない。同じ元信者でもうまく社会復帰できた者と社会に不適応を起こす者とでクッキリと明暗が別れている」
と明かす。
生活保護によって教団運営をまかなっている!?サリン事件後に、脱会したオウムの在家信者だった60代の男性は、教団OBらの社会復帰の困難さをこう訴える。
「若い時分に脱会した人はまだいい。20代や30代なら、過去を忘れて再出発もできる。でも、40歳を超えて社会にいきなり放り出されてもどうしようもない。オウムの消滅と時期を同じくして、社会もどんどん不景気になっていった。元信者にできる仕事といえば、過去の経歴を詮索されない肉体労働や夜の商売ぐらいしかない」
ただ、過去を隠して仕事にありついても、?オウムの影?はつきまとう。雇い主に素性がバレれば、途端に解雇や失職の危機にさらされてしまうのだという。
「そんな状況だから、生活保護を受けるしか、生きていく術がないという人も多い。特に高齢信者の割合が高いといわれる『ひかりの輪』は、生活保護受給者も多いと聞く。一説には、そうした信者が受け取る生活保護費によって、教団の運営もまかなっているという話だ」(先の元信者)
教団の元幹部には、困窮した元信者を集めて、「貧困ビジネス」に手を染める者もいるという。
「ある元幹部は、生活保護受給者を住まわせて保護費のほとんどを徴収する、いわゆる『福祉アパート』を運営している。その入居者のほとんどがオウムの元信者だ。本人は『仲間の生活支援』と言っているが、教団での立場を利用してかつての仲間を食い物にしている側面は否めない」(同)
20年の月日の流れが、元信者に容赦ない現実を突きつけている。
(取材・文/浅間三蔵)