年収別消費増税による負担増額試算(年)

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消費税10%超時代にビクともしない筋肉質な家計とは

消費税率は5%から8%へ引き上げられ、はや3か月。そしてあと1年ちょっとの2015年10月からは10%に再引き上げ予定です。

2014年4月の消費者物価指数(コアCPI)は、前月比+2.2%、前年同月比+3.2%と、5%時代より上昇しています。一方の賃金は、「毎月勤労統計調査」(厚生労働省)によれば、2014年4月の現金給与総額(名目値)は前月比△0.915%、前年同月比では+0.698%でした。賃金はほとんど変わっていません。現時点でアベノミクス効果を判断するには拙速かもしれませんが、消費増税が家計に影響していることだけは確かです。

消費増税だけではありません。社会保険料も上昇傾向が続いています。所得税や住民税には復興特別税も加算されています。手取り収入がなかなか増えない時代に消費増税の波が押し寄せていて、その波はさらに高くなりそうなのですから、家計は本当に厳しい環境です。

そうした「未知の負担増社会」に耐え抜くだけの家計づくりには早くから対策を立てておかなければなりません。なぜなら、家計の「癖」は一朝一夕に変わらないからです。本格化する負担増社会に負けない筋肉質の家計をどのように作っていけばいいでしょうか。目指すは、贅肉のないしなやかで強靭な割れた腹筋のような家計です。

家計を強くするには、「収入を上げ」て、「支出を下げ」て、いまあるお金を「運用で殖やす」ことに尽きます。ただ、これまでの「やり方」や「考え方」を、変える必要があるかもしれません。

まず、収入をどうやって増やすか。

■「長く働く」ために現役世代が今、できること

端的に言うならば、「長く働く」ことです。年収そのものを上げようとするのではなく、長く働くことで生涯賃金を確保する作戦です。高齢化社会の問題の一つが「長生きリスク」です。本来、長寿は喜ばれるべきものですが、資金的なリスクを抱える面は否めません。寿命が延びた一方で、リタイアの年齢はほとんど延びていない。

このリスクを積極的に回避するのであれば、長く働くことを現役時代の今から視野に入れておくことです。老後のために500万円を貯めるのは大変ですが、通常のリタイア年齢以降も、年収100万円で5年間、年収60万円で8年半働くというのは不可能ではないのではないでしょうか。

そのためには何より、今もその時も健康であること。そして、自分を支えてくれる仲間や家族を大事にすること。さらに、現在の仕事のスキルをできるだけ伸ばすことなどが重要になってくるでしょう。

次に、支出の減らし方です。

支出をいかに減らすか、というと、「節約」が思い浮かびます。しかし、「節約疲れ」という言葉に象徴されるように、家計に前向きに取り組むイメージではありません。また、これからの負担増社会を考えると、ちょっとした節約では乗り切れない可能性があります。

ここは発想を大きく変える必要があります。つまり、何を買わないか(節約)ではなく、何を買うかということにフォーカスした支出にするのです。

入ってきたお金の行き先は結局、使うか貯めるか。正しい使い方なら、むしろ支出は絞られ、貯蓄につながります。大事なのは、その商品やサービスが自分の生活に本当に必要か、また、自分や家族を心から豊かにしてくれる支出かを見極めること。「正しい使い方」をすることに意識を集中させることが負担増社会を耐え抜くコツなのです。

これは逆に言えば、ムダ使いをなくすこと(節約)なのですが、手取り収入が減って、ただでさえ心理的に窮屈になりやすいときに、さらに「何を買わないようにしようか」と考えるのは、精神衛生上よくありません。かえって、ストレスがたまり浪費に走ってしまっては本末転倒もいいところです。

「家計管理」と「健康管理」はよく似ています。

■健全な家計は、健全な肉体に宿る

どちらも一朝一夕に贅肉のない「健康体」はできあがりません。日々のコツコツとした地道な心掛けが大事です。「正しいお金の使い方」は、いわば「正しい食事の摂り方」。時間がないからと、コンビニ弁当やインスタント麺、どこでも買える清涼飲料水や夜食代わりのスナック菓子などばかりでは、当面の空腹感を満たせても、中長期的な体づくりにはなりません。日々の食事やお金使いは、長い時間をかけて「結果」が出ます。生活習慣のちょっとした差は時を経て、とてつもないギャップとなるのです。

老後も働くことができる健康な体づくりは、健全な家計づくりに欠かすことはできません。医療費が浮くのはもちろん、割安な生命保険に加入できる、働いて収入を得ることができる、そして、心の健康にもつながり、笑顔になれます。笑いは医学的にも健康にいいといわれていますから、正のスパイラルが生まれます。

負担増社会だからといって、縮こまるような生活はつまらないです。限られた大切なお金を何に使って、どうしたら自分や家族が心から豊かになれるのか、前向きにじっくり考えていきましょう。私たちは精いっぱい生きる義務があると同時に、幸せになる権利を持っています。大切なお金は、そのために有意義に使うべきものだと思います。

(ファイナンシャル・プランナー 八ツ井慶子=文)