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立命館大学(立命館大)は、複数台の超音波スピーカを用いて、3次元空間内の"点"(極小領域)にのみ可聴音を再現する音響技術を開発したと発表した。

同成果は、同大 情報理工学部の西浦敬信教授らによるもの。詳細は、電子情報通信学会論文誌に掲載された。

一般的なスピーカは、音が空間に拡散するように設計されているのに対し、超音波スピーカは、人間には聞こえないキャリア波と側帯波により構成される超音波を空気中に放射して、キャリア波と側帯波の相互作用により復調させることで、特定の領域にのみ可聴音を再現することができる。しかし、再現できる可聴音の領域はスピーカから超音波を発する方向の直線状となるため、本来可聴音を届けたい極小領域、例えばユーザーの頭部や耳元などにのみ焦点を絞って"点"で音を再現することは困難だった。

今回の研究では、キャリア波と側帯波を別々の超音波スピーカから分けて放射(分離放射)させることで、キャリア波と側帯波が3次元空間上で重なる"点"にのみ復調が生じ、可聴音を再現することに成功した。同技術により、同一空間内に複数の極小領域での可聴音(オーディオスポット)を同時に再現できるため、ヘッドホンなどなしで各ユーザーの耳元にのみ聞こえる"オーダーメイドな音"を空間内に実現することが可能となり、同一空間における様々な音のニーズ(スピーカよる騒音問題などを含む)を解決することが期待される。

同技術の応用の可能性として、家庭のリビングにおけるテレビ用スピーカや、美術館における絵画や彫刻の説明用スピーカ、広告業界におけるデジタルサイネージ用スピーカなどでの活用が期待される。また、スポーツ分野においてサインの変わりに超音波スピーカを用いて特定の選手に指示を出すことができたり、介護分野では聞かれたくない個人情報を特定の人にだけ伝えることができたりと、これまでの日常生活が劇的に変わる要素も含んでいるとコメントしている。