本塁打を打った恩田(我孫子東)

我孫子東の正捕手・恩田の殊勲打で延長を制す!

 近年、実力を付けつつある我孫子東と2009年夏甲子園出場の八千代東の一戦はシーソーゲームの末、延長戦となった。

 1回表、我孫子東は4番岩田の適時打で1点を先制する。しかし、その裏、八千代東は二死二塁から4番加藤が直球を捉え右中間を破る二塁打、5番川村が右中間を破る三塁打で、連打で2点を入れて逆転。 2回表、我孫子東は1番金子の適時打で追いつくと、3回表、3番恩田 綾(2年)が、甘く入った初球を見事に本塁打にして勝ち越しに成功。さらに岩田が三塁打の後、パスボールで1点を追加し、4対2とリードする。

 さらに我孫子東は4回表、二死一、二塁で追加点のチャンスを作る。4番岩田を迎えたところで八千代東は投手・完倉 康記(3年)を投入する。背番号18をつけているが、完倉は主戦だ。我孫子東ナインは彼を一番警戒していた。完倉は4番岩田に対し、直球勝負を挑み、空振り三振を奪い、ピンチを切り抜けた。それまで我孫子東優位な流れだったが、完倉は流れを八千代東に呼び戻した。

 完倉は昨年から経験を積んでいる左腕。左スリークォーターから投げ込む直球は常時120キロ後半(最速132キロ)。しかし、ストレートは球速表示以上に勢いがあり、小さく切れるスライダー、右打者の外角へ沈むチェンジアップ、カーブと球種は多彩。何より打者を恐れずビシバシと攻め込んでいく度胸の強さが良い。

 2点を追う八千代東は、4回裏、二死一、二塁から1番紫垣が右中間を破る三塁打で再び同点に追いつく。さらに6回裏、二死二塁から2つの敵失で、2点を勝ち越しに成功し、6対4とした。

 だが我孫子東は7回表、一死二塁から5番草刈が中越え二塁打で1点差に迫り、一死一、三塁となって、7番中村のスクイズですぐさま同点に追いついて、ゲームを振り出しに戻した。

 

完倉(八千代東)

 9回で決着がつかず試合は延長戦へ。10回表、二死三塁のチャンスを作り、3番恩田。八千代東バッテリーは恩田に対し、変化球中心の攻め。「狙い通りの変化球が来ました。打つポイントをやや遅らして振り抜きました」と恩田。 打球は右中間を破り、タイムリー二塁打で勝ち越しに成功した。

 そしてその裏、八千代東も粘りを見せる。一死から5番川村が望みをつなぐ三塁打を放つ。次の打者が放った打球は左飛。やや浅いレフトへの飛球となった。三走の川村は果敢にタッチアップ。レフト・草刈からショート・篠田を中継し、恩田のミットにボールが収まりタッチアウト。我孫子東が代表決定戦進出を決めた。

 我孫子東の大井監督は「いろいろミスがありましたし、負けを覚悟をしました。ですが、打線がしっかりと打ってくれて取り返してくれたと思います」 打線の粘りを評価。左の好投手・完倉から3点を入れるのだから、なかなかの攻撃力の高さである。そして大井監督がこの試合の殊勲者に上げたのが2番手の染谷 祐樹と捕手の恩田である。

 染谷は球速は常時120キロ〜125キロ前後と決して速くないのだが、スライダー、カーブ、チェンジアップをコントロール良く投げ分ける右投手で、慌てずに自分の間合いで投げることができているのが良い。慌てずとはいっても、リズムが良い。リズムが良いと引き締まるので、我孫子東ナインは締まった守備を見せていた。リードする恩田も、「コントロールも良く、リズムも良く、リードがしやすかったですね」恩田は八千代東の打者の弱点を徹底的に突く配球が出来ていた。打っては追加点となる本塁打、決勝打となる右中間を破る二塁打。染谷と恩田。夏を騒がせてくれそうな期待値の高い2年生バッテリーだ。

 苦しい試合をのりこえた我孫子東ナイン。この激戦を勝ち抜いた経験は次の試合で生きるはずだろう。代表決定戦ではさらに成長した姿を見せることが出来るか注目をしたい。

(文=河嶋 宗一)