都立雪谷vs堀越
10回を完投した鈴木優(都立雪谷)
堀越は昨年の夏は高島、都立王子総合には勝ち、都立城東に敗れ、秋は都立小山台に敗れ、この春季大会も都立文京、都立武蔵丘と、都立の強豪との対戦が続いている。3回戦の相手である都立雪谷も、好投手・鈴木 優を擁する都立有数の強豪。都立と私立の強豪対決は、予想通りの熱戦になったが、鈴木 優の成長が、都立雪谷に勝利をもたらした。
都立雪谷は2回戦で選抜大会に出場した都立小山台と対戦。都立雪谷の鈴木 優と、都立小山台の伊藤 優輔という評判の好投手対決が予想されたが、結果は9−7というハイスコアの戦いになった。「投げ急いでしまい、自分のピッチングができなかった」と語る鈴木は、その反省を生かした。
試合は2回表都立雪谷が、8番佐川泰基、9番木本航平、1番山北泰輝、2番菅野智也の四者連続安打などで2点を先取した。
その裏堀越は、先頭の4番原 彩登が遊撃手の失策で出塁。原は一塁への牽制悪投で二塁に進んだ。
「あれは、鈴木の牽制が早くなってきており、一塁手が対応できなかった」と、都立雪谷の相原健志監督は言う。一死後、藤井誠が左前適時打を打ち、堀越が1点を取り返した。鈴木にしてみれば、味方の失策による失点であるが、鈴木は冷静であった。そこから、ストレートに力が増し、変化球も効果的で、堀越打線を寄せ付けない。
一方の堀越の先発である背番号11の渕上 佳輝もいきのいい球を投げて、都立雪谷に追加点を許さない。緊迫の試合は瞬く間に9回、堀越最後の攻撃を迎えた。この回一死後、原が四球の後、続く入山功大の遊ゴロを、遊撃手が二塁へ暴投。一死一、三塁のピンチとなった。続く6番の藤井はスクイズを決め、9回裏に堀越は同点に追いついた。
先発・渕上佳輝(堀越)
2回、9回と味方のエラーで失点した鈴木であるが、慌てた様子は全くない。10回表になると、都立雪谷の猛攻が始まった。その伏線になったのは、8回裏に先頭打者であった渕上に代打を送ったことだ。鈴木から反撃の糸口をつかめないでいたため、あの場面での代打策は定石通りだ。しかし、渕上を打ちあぐんでいた都立雪谷にすれば、幸いであった。
9回表こそ代わった吉沢勇気に三者凡退に抑えられたものの、10回表には8番佐川が左中間に打球が転がる間に一気に三塁まで進む三塁打。一死後1番山北がレフトオーバーの二塁打でまず勝ち越し。続く菅野が左前安打で一死一、三塁。4番でもあるエースの鈴木が、右中間を破る二塁打を打ち二者を返し、自ら勝負を決定づけた。
「カーブ一本に絞って、右方向に打てた」と、鈴木は語る。結局10回表に雪谷は5点を入れ、その裏の堀越を無得点に抑え、都立雪谷が7−2で堀越を破った。
試合後都立雪谷の相原監督は、「味方のエラーにも動じない、バッテリーの成長を感じた」と語った。鈴木の成長をもたらしたのは、上(プロ)を目指すと目標を定めたことによる、トレーニングの姿勢などへの変化であった。秋季大会はブロック予選で負けるなど、紆余曲折を経たチームであるが、鈴木を中心に、少しずつチームとしての形が整いつつある。
堀越は敗れたとはいえ、力のあるチームであることは間違いない。その堀越が夏の大会のシード権を逃したということは、夏の東東京大会の波乱の要素になるかもしれない。
(文=大島 裕史)